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穏やかにその日その日が過ごせるようにと医療スタッフの取り組む姿勢を、また、できることとできないことがあるということをきちんと話され、できることは一生懸命取り組むと決意を示されていた。

患者・家族はコミュニケーションの中で非言語的コミュニケーションも含め様々な表情を示していた。日ごろ気づかずに言葉だけのやりとりになっているのはないかと、改めてコミュニケーションの大事さに気づかされた。

コミュニケーションは単なる言葉と言葉のやりとりではなく、心と心の繋がりが深まる関わりであり、様々な感情を共感し合う気持ちの交流である。それが欠けているとしたら、いくら時間をかけて話し合ってもコミュニケーションを行ったことにはならない。

(2) 看護婦の基本的役割は生活の援助にある

入院中の患者で援助を求めること、特に下の世話や失禁に関して援助を求めねばならないことを非常に恥ずかしく、つらいと感じる人がいる。自立して生きてきた人には、突然他人に世話をしてもらわねばならなくなることは大きなストレスである。病気になって孤独感や喪失感を経験している中で、さらに大きな行動上の制約を加えることにより、より深い孤独感を与えることになる。

実習中そんな患者に対していつも優しい笑顔で心を込めてケアをし、安全でそして安楽を提供することで、患者の気持ちが少しずつではあるが開かれていったのを感じることができた。患者は自分が大事にされていると思うと気持ちがゆったりとしてくる。患者さんのおだやかな表情はそこから作られてくるのかもしれない。

 

3) インフォームド・コンセントの実際

医療者は患者の同意を得るためにどういうコミュニケーションを構成していくか。実習病院において、医師は医師として、良き友として、クリスチャンとして嘘はつかず正直な姿で最後までつきあっていく、そういう覚悟で患者の前に立っておられた。

医療チームによる説明は、患者の病気がどういう状態か、なぜそうなるのか診断の根拠を明らかにし、それに対してどういう対処をすることがよいのかを理解してもらうことが目的になる。説明し質問を受け、相手の理解に応じてさらに説明するきめ細やかさが求められる。したがって説明は相互の情報交換としてのコミュニケーションであり、相手の受け止め方を理解して相手に応じて伝え方を工夫していく過程が大切になる。つまり、患者の心理を知ることが医療者の説明の効果を決定する要因ともなる。

 

4) チームにおけるそれぞれの役割と実際

(1) 医師の働き

医師はチームのリーダー的存在である。他のチームメンバーと組んで協力ができるかということが大事である。

(2) 看護婦の働き

緩和ケアに関わる看護婦にとって最も大切なのは、基本的看護技術を持っていること、さらに患者の言葉に耳を傾けられるかどうかということ、その際患者が持っている感情に焦点をあてて理解的態度で接することが大切である。

(3) 宗教家の働き

チャプレンはホスピスの中で患者全体を見ていくことを視点に深く関わっておられた。患者が「今の気持ち」に気づけるように、そして「今ここに生きている」ことが感じられるように心のケアを提供されていた。また、希望されれば病院の中で葬儀・納骨も可能なこと。栄光ひまわり会という遺族会もあり、電話相談にも応じ遺族のグリーフワークにも深く関わっていた。また、職員の心のケア、院内のイベントの計画調整、病院全体のコーディネーターの働きもされており、多方面に深く関わっておられた。

(4) 栄養士の働き

末期患者にとって毎日の食事は非常に大切である。それぞれの好みに応じて料理を出すことができれば、患者のQOLの向上にとつながる。

 

 

 

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