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緩和ケアは発病の段階から

 

山口県立中央病院

山下 幸子

 

はじめに

 

4週間の講義を終え実習に臨んだ。今までホスピスの経験は全くなく、イメージとして持ち得るものは研修中に見学した六甲病院だけである。

したがってかなり緊張しており、不安とそして同時にわくわくした期待もあった。

そんな中、総婦長のゆったりとした笑顔に迎えられ実習が始まった。病院全体では派手さはなく、しかし掃除はしっかり行き届いていてこざっぱりとした印象を受けた。

実習での目的は、研修での学びを統合し、実習施設での看護の実際を通して緩和ケアに対する知識・技術が深められる。

実習目標としては、

1. 1999年、緩和ケア病棟の数は60施設を超えたと言われているが、それでも多くのがん患者は一般病院で亡くなっている。したがって緩和ケアは一般病院においても必要不可欠なものであると思う。ホスピスの学びを通して一般病院における緩和ケアが明らかにできる。

2. 緩和ケアにおける看護の専門性について考えを深めることができる。

 

実際

 

1) 症状コントロールの実際

ホスピス入院時の主訴の1位は痛みであり、60%以上の患者ががんに伴う疼痛に対して有効な除痛が得られないことがホスピスへの入院の理由となっている。身体的苦痛のコントロールはホスピスケアの突破口であり、これを経て初めて次の段階のケアに進める。

亀山栄光病院における症状コントロールは、患者とのコミュニケーションの中で訴えに耳を傾け、問い、観察を通してよりよい方策を立てている。患者の穏やかな表情からも症状コントロールの大事さが伺える。

同じがんの痛みでも、ある医療者のところでは緩和され、他の医療者のところでは苦痛のままにおかれるという現実を生む。がんの痛みを緩和できない理由として、痛みのアセスメント不足があげられる。例えば医師から疼痛時の指示がいくつか出ているとき、看護婦はどの薬剤をどのように選んでいるのだろうか、「今」の患者の痛みに何が効果的であるのか痛みのアセスメントに基づいて考え、さらに今までどの薬剤がどのくらい有効かという再評価の結果を踏まえて選択しているだろうか。

一人ひとりの医療者が根拠(Evidence)に基づいて行動するという意識を持つことが重要と思う。

 

2) 看護婦について患者・家族へのケアの実際

(1) 入院時の取り扱い

とにかく時間がゆっくりと流れ、患者・家族にとても丁寧に接し、本当に大事にされていた。まず身体的苦痛を尋ね、症状コントロールの取り組みが早く早急な援助が必要かどうか確認されていた。つぎに患者・家族に対して今まで過ごしてこられた日々をねぎらい、共感的態度で接しておられた。同時に病気のことをどう認識されているか患者の言葉で聞かれていた。病状説明に関してもわかりやすい言葉で行い、例えば何々と例を示しながら行われていた。

 

 

 

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