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実習を終えて学んだこと

 

松江市立病院

三浦 節子

 

私は、実習の目的として、「講義で学んだことを実際と結びつけて学ぶ」「看護ケアの実践、工夫されているところを学ぶ」ということを持って挑んだ。

患者さんとの関わり、患者さんと看護婦さんとの関わりの、一つ一つの場面で本当にいろいろなことを学んだ。そして今までより、心に響き、感じられるものが多かったと思う。

病棟を案内していただき、病棟理念にもあるように、静かで明るく、温かい家庭的環境であり、病院というよりは生活の場であると感じた。患者さんが穏やかに過ごせるように防音や照明、かべやカーテンにまでいたる細かなところにまで最善の配慮がされていた。このことは、患者さんだけではなく家族の方にとっても同じことが言え、家族の方も患者さんと同じようにケアされていると思った。

実習を通して一番強く感じたことは、患者さんが一人の人として尊重されているということであった。患者さんは一人ひとり違う人間であり、価値観も違えば家族のあり方も違う。当たり前のことであるが改めて実感した。

このことは、ある患者さんとの関わりで私自身が体験した。少し痴呆のある高齢の患者さんで、食事は止めてあったが、赤飯を頼んでくれと希望された。すぐには準備できないと説明すると、怒りだしてきた。看護婦さんは、患者さんの訴えをじっくり聞いておられ、赤飯は無理だがおにぎりならあると詰所からおにぎりを持ってこられ、一応納得された。私はおにぎりを食べる介助をした。飲水をするのも一人では難しい状態であったので、おにぎりを口へ運んだら怒られた。「人間として扱っていない」とその時気付かされた。人として尊重していなかったと、私が介助することにより患者さんを傷付けたのだと。また患者さんができると思っていることまでとってしまった。このことはリハビリの講義にも通じるものがあると思った。患者さんの『するADL』を患者さんと一緒にどのように進めていくかが必要であり、一つ一つのADLのやり方を考えていくことが、QOLの向上につながると考える。

症状コントロールについて、できる限りの手段を用いても患者さんが満足するようにコントロールできないこともあり、難しさを感じた。また、症状コントロールができていないと、次のニードを満たすことはできない大切さも感じた。そのために、症状をマネジメントできる能力がどれだけ必要とされているか、看護婦として担う役割の大きさを実感した。それと同時に、一日のうちでも患者さんが調子いいと思える時は限られている。その時に何をするかということはとても大切なことであると思う。ある患者さんは腹部緊満による苦痛、疼痛が強く、コントロールも難しく始終苦痛様であったが、一日に一回だけ車椅子に乗り買い物へ行き、胃管チューブが挿入されていたが、買ってきた氷をホールで食べておられた。この時だけは少し穏やかな表情が伺えた。看護婦さんは、この患者さんの希望を支え、希望してこられた時はできるだけ安楽に叶えられるよう努力しておられた。この患者さんのように良い機会を逃さず希望に応えるには、患者さんが何を希望しておられるのか、何を大切に思っておられるのか、どのように生きてこられたのか、などを知った上でその人にあったケアができれば良いと思う。

 

 

 

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