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3) 目的の共有

病院の理念として、キリスト教に基づいた「全人医療」が掲げられていて、それがそのままホスピスの理念に通じていた。病める方、苦しんでいる方すべてに愛と癒しを提供しようとする方針が貫かれていることには感心した。これは、宗教の基盤がなくとも、すべての医療において共有されなくてはならない点であると強く感じる。誰のための医療なのか、医療の場に身を置くものが常に真摯に考えていかなければならないことと再認識した。

 

4) 医師との連携

チーム医療は、それぞれの専門職がお互いの意見をよく伝え合う中で意志統一をはかり、患者への全人的アプローチが可能になるとされる。しかし、ホスピス病棟とはいえ、(治療)方針の主導権を握っているのは医師であるとの感が否めなかったように思う。看護婦のチームの中でのコーディネーター的働きは、十分に発揮されてはいなかったように思う。月1回開催されている症例検討会に参加する機会を得、医師の視点と看護婦の視点は、どうしても相容れないものがあるように感じてしまった。私自身もそうであるが、看護婦として患者さんの感情を重要視するあまり、身体的なマネジメントを徹底的にしない場合がある。おそらく患者さんはこう思っているだろうという推測で判断してしまう場合がある。また、医師に要求ばかりして、看護的な働きを二の次にしてしまう場合も少なくない。看護婦として本当に患者さんが望むことを引き出すコミュニケーションの取り方が重要と考える。そして、医師に伝える場合、患者さんの実際の事実の言葉を伝えることで新たな対応も生まれるように思う。

 

5) 看護婦のストレス

ホスピス病棟の看護婦はすべて、そこで働くことを希望して来てはいる。しかし、死が近い患者さんばかりの中で、思うような最期を迎えられなかった患者さんのことや家族とのトラブルなどで、精神的に疲れることも多い。それは、一つは先にも述べたように、一番身近なパートナーであるはずの医師との連携が、十分に上手くとれないことも関与しているように感じた。また、緩和医療やケアにおける学習の場の提供が、十分にできないといったこともあるようである。緩和ケアを担っていく中で重要な点であると考える。

 

今後の課題

 

1) 自分の所属する病院に戻ってからの課題

がんの専門病院であるため、緩和医療については地域の模範となっていく使命があると思われる。また、これからの医療に求められるものとして「末期医療の見直し」が上位に位置されている現状もある。しかし、がんに対する高水準の医療の提供が優先される中、治療がない(できない)患者さんが置き去りにされがちな傾向がないとはいえない。

 

2) 看護婦の役割

ホスピス病棟では多くの職種の存在があり、それぞれが役割を持ち活動していた。それからみると、医師、薬剤師、ソーシャル・ワーカー以外の職種が存在しない分、その役割の多くを看護婦が担うことになる現状がある。看護婦として、緩和医療の中核をなす存在として学びを続けていくことの重要性を感じる。また、緩和医療(ケア)に関心が高い看護婦同士の連携も必要であろう。看護部長の理解と、昨年のこの研修コース受講生との協力のもと、自分も含めて一人でも多くの看護婦に、ホスピスケアを提供できる力量を備えていけるよう今回の学びを活かしていきたい。

 

 

 

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