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緩和ケアでの家族援助の視点をまとめてみた。

1] 「家族全体の人生」が完結するという視点で、限られた時間であることを認識し、いたわり合うことのできる家族機能が、高められるような家族関係を目標にして援助する。

2] 死別後の悲嘆に対して、その段階に応じて必要な情報を提供し、障害を乗り越えられるよう援助する。

臨床では看護婦に家族が相談することが少ないように思える。家族を看護の対象としながらも家族単位でとらえられていないのだと思う。先ずは家族から気軽に相談されるよう努めていきたい。

 

チームアプローチ

 

緩和ケアにおいて患者のQOLを高め、希望をもって生きられるようサポートするには、それぞれ異なる分野の者がお互いの知識や技術を提供し、チームで目標を共有し補完し合いながらケアをしなければ目標の達成は難しい。チームがうまく機能するには、それぞれが緩和ケアの理念を理解し、目標を共有化できていることが大切で、事例に関わるそのたびに、確認し合いながら進めていくことがチームの成長につながると考える。

看護婦はチームの中でコーディネートする役割をもっている。カンファレンスの場だけでなく、いろいろな場面を利用して、施設内外の多くの専門職に働きかけ、患者の目標が達成するよう、チーム全体を考慮した看護の展開が大切であると考える。

また看護チームについて考えると、緩和ケアチームの中で看護婦に期待されている役割と責任が果たせているかを振り返りながらすすめることが大切である。患者の看護に当たっては、プライマリーナースが中心になり看護することが多いが、それぞれのメンバーがプライマリーをサポートして、メンバーのもつ力が有効に活用されるようにフレキシブルに対応する必要がある。チームのコミュニケーションをよくし、メンバーの役割がフレキシブルで自由であるようなチーム作りは、婦長の大切な役割であることが認識できた。

 

教育について

 

緩和ケアに携わる職員は、人それぞれの“生”を大切にするために、患者から学ぶ姿勢を忘れてはいけないと考える。貴重な患者の体験を様々な学問の分野から考えてみることにより、ターミナル期の患者の苦痛を理解できるようにする。またインフォームド・コンセントや患者の権利について考えていく必要がある。

治療に関して、Evidence-based Medicine(EBM)の観点からみると、緩和ケアに対する科学的根拠(Evidence)はほとんどなく、多くの施設の経験に基づいて行われていることが多いと講義の中で伺ったが、症状コントロールやケアの一つ一つについて、患者の情報を基に既存の知識を活用し、なぜその方法が効果的かをチームで検討しながら、学び取り組んでいくことが大切であると考える。

また緩和ケアに関わる職員は、各部署での緩和ケアの取り組みに参加して一緒に学びながら、緩和ケアの理念が患者や職員、地域の人々に理解していただけるような役割も望まれていると考える。

 

おわりに

 

暖昧であった緩和ケアの概念や実践に必要なことなどが少しずつ明確になり、これから取り組む課題が見えてきた。私の勤務する組織の目的や機能を認識し、求められる緩和ケア病棟の看護婦の役割と責任が果たせるよう、携わるすべての人の力を借りて、焦ることなく取り組んでいきたいと今思えている。

私がいつも課題にしていることは、医療チームの中での看護婦の責任において解決すべきことを、主体的に患者やチームに向けて働きかけられることであり、緩和ケア病棟の中でさらに求め続けていきたいと考えている。

 

 

 

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