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緩和ケアの目的は、患者とその家族ができるかぎり良好なQOLを実現できるよう援助することである。また、患者が家族とともに死に向かってよりよい準備ができるよう援助することである。緩和ケアの最終目標は、苦痛緩和ではなくQOLを向上させること。これは、今まで緩和ケアは苦痛の緩和と捉えていた狭い自分の考えを大きく変化させられたことである。看護婦は、苦痛の緩和は最優先しなければならないが、さらに“基本的な生活を整える”ことが重要な役割となる。そして死が訪れるまで、患者が積極的に生きていけるよう支援していく。また、看護婦はリアリストでなければならないという。死の過程で最期まで失わない希望=期待感を持ち続けることは大切であり、希望の維持は現実的な修正のなかで行われていくものであり、看護婦には個々の希望が現実的なものかどうかの判断と、非現実的なものを現実的なものに修正していくことが要求されるのである。ずっと逃げない態度をもつことと、現実としっかり向き合う姿勢が必要であると学んだ。

緩和ケアにおいて生命倫理、看護倫理は重要な問題である。すべての医療、看護活動には倫理的側面がある。「看護の専門家は自分がしていることを説明できるくらいに自分で理解していなければならず、また、無意識にもっている倫理的な考えを吟味して、妥当なものへと洗練しておき、さらには、難しい状況にも対処できるような知を備えている必要がある」と指摘され、あらためて自分の考えの甘さに向かい合い、自分の倫理観を考え直すことができた。倫理は事実ではなく価値に関わること、患者の最善の利益を基準に考えることを見失わないようにしたい。

IC(インフォームド・コンセント)に伴う看護の役割も大きい。未だ多くの医療者は「ICをする」という捉え方をしているように感じる。患者・家族は医師の説明だけでは十分な理解を得られていないのが当院での現状である。寺本松野氏は「人間の最期の準備とその実現のために、彼らを信頼し、支えていただきたいと希望しています。病人に真実を告げることのみがインフォームド・コンセントではなく、支えるために責任をもって行われる医療であり、人間学だと思います。看護の中でのインフォームド・コンセントの役割は、雰囲気づくり、あたたかくその実現を見まもり、側面から手をのばし支え、いたわることではないでしょうか」と述べている。人間を尊重し、その潜在的な力を信頼することが必要である。

 

2) 緩和ケアに必要な知識・技術

緩和ケアの3原則は、1]適切な症状マネジメント、2]コミュニケーション、3]家族への援助といわれる。この3原則を基に、看護婦に必要な知識・技術を考える。

1] 適切な症状マネジメント

緩和ケアではまず、患者の身体的苦痛の緩和が最優先される。そのためには主な症状の病態生理を知り、症状をより正しくアセスメントする能力が必要となる。そして、その人にあった適切な症状緩和ができなければならない。「症状マネジメントは看護婦の仕事である」といわれる。患者のいちばん身近にある看護婦だからこそできることであり、その役割は大きい。講義では症状マネジメントの具体的方法を知識として得ることができた。しかし、いろいろな症状が混在し訴えも日々違う患者の苦痛を、適切な時期に適切な方法で取り除くということは本当に難しいことであると感じている。薬剤の使用方法など患者の状態にあわせながら細かな匙加減を必要とする部分は講義では十分理解できず、今後実践で学んでいきたいと思う。

内布先生の講義では「症状は患者が主体になって取り組む」ということを学んだ。看護婦は患者が主体的に行っていけるよう、潜在的能力を高める働きかけをするのである。症状は患者にしかわからず、その症状体験と患者自身のセルフケア能力に注目し、それを大切にしていくというのは当然のことであると思うが、実際にはできていない。何時の間にか医療者主体の症状マネジメントになっていないかと考えさせられた。患者自身が症状コントロール能力を身につけるためのマネジメントも必要である。

 

 

 

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