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大川先生の講義では、患者のQOLを高めるという視点から、終末期患者のリハビリテーションの重要性を学んだ。看護者が「できないこと」を作っていたのではないかと考えさせられた。ADLの指導とは、リハビリ室で行うものではない。生活の場での能力を最大限に高めることである。リハビリ医学とは生活を診、プラスを診ることである。これには今までの考えを改め直すことができた。今後、1cm単位の変化に気を配っていきたいと思う。

2] コミュニケーション

患者と看護者の関係は、専門的(治療的)な関係性であり、そのための手段としてコミュニケーションスキルは重要である。コミュニケーションは援助過程に不可欠なものであり、効果的な援助ができるかどうかは、看護者のコミュニケーション技術に大きく影響される。プロとしての技術が必要となる。癒しの関係としての看護者一患者関係を築くのであれば、それを意図的に行っていかなければならない。“癒し”は看護者の専売特許ではなく、また偶然に起こるものではないのである。

看護者が一番困難と考えている患者の反応は“怒り”であるという。怒りは最もコミュニケーションを妨げやすいものであり、怒りに反応するのではなく、怒りの原因を患者自身が明確にできるような対応が必要である。看護者はそういう患者の感情を24時間引き受けていかねばならない覚悟が必要であること。また、現象の裏にある物事の本質を理解していくことが必要であると学んだ。

岡谷先生の講義を受け、今までコミュニケーションスキルを重要視していなかった自分に気づいたと同時に、特に緩和ケアを行っていくうえでこれほど重要な技術はないとあらために認識すること力寸できた。

3] 家族への援助

家族の一員が終末期を迎えることは、家族の心身のみならず、家族の生活や家族成員間の関係性、家族と社会との関係性などにも多大な影響を及ぼす。家族援助の目的は「家族成員との死別が不可避であるという現実から派生する、多くの影響に対する一単位としての家族対処を促すことである」といわれる。看護者は、家族看護の基本となる家族理論を知り、家族とはどのようなものかを理解し、患者個々への援助と同様、一単位としての家族への援助を計画的に行っていくことが必要である。看護者は、往々にして「変な家族」「変な対処」と捉えてしまうことがある。家族の安定を取り戻そうとする精一杯の努力として、温かい目で見守り、複雑な心の動きに関する深い洞察が必要である。「家族のストレス源は患者の苦しんでいる姿である」という。まずは、患者の身体的苦痛緩和が最優先される。また、家族の健康を保持することも看護者として必要な援助である。がん患者の家族はパワーのない状態にある。病名告知を拒否するなどの行動も当然といってよい。エンパワーするには「聴くこと」であるという。家族に最期までサポートすることを告げ、引き受ける覚悟が看護者には必要である。

 

3) 心のケア

がん患者や終末期の患者のケアをする多くの看護者が、心のケアをしたいと望む。しかし、精神・心理的苦悩は身体的苦痛のように明らかにできるものではない。どのように関わることが患者や家族の心に触れるケアになるのか、常に悩みながら関わっている。講義を通し、進行がん患者の心理的特徴、家族の心理など自分自身の経験とも照らし合わせながら理解することができた。心理的特徴を知るということは関わりをもつ上でとても大切なことであるが、何よりも看護者自身が一人の人間として正面から患者・家族と向き合う姿勢が必要である。石垣靖子氏は、「漫然とした不安を言葉にすることによって、患者は自ら気持ちの整理ができたりする。話す=放す=離すというプロセスを経て、胸につかえていたものを離し、バランスを取り戻すことができるのである。それは何よりも患者にとってはよい治療になる」と述べている。心のケアをするなどというおこがましいことは到底できるはずもないが、患者・家族の話を「聴き」、「共感」することを大切にしたいと思う。

 

 

 

 

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