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実習について

 

実習では実際に現場でどのように看護・医療が行われているのかということに興味を持ち10日間という短い間だったが救世軍清瀬病院で行うことができた。清瀬病院を希望したのは、宗教がどのように緩和ケアに関わっているのかということに興味があったためである。初めて緩和ケア病棟に入り、いつも自分が働いている病棟とは時間の流れ方が違うような気がして最初は違和感のようなものを感じた。

実習するまで最もイメージがつきにくかったのはチームでケアを行っていくということだった。しかし、病院で実際に緩和ケアがどのように実践されているのかを肌で感じることができた。様々な職種がそれぞれのアプローチの仕方で患者と関わりを持っている様子を知ることができた。患者側も様々な職種のスタッフが関わることで、この問題ならこの人へ相談するというように窓口がたくさんあり、それだけ多くのサービスが受けられるということがわかった。それぞれの職種の方々と話す機会を与えていただき、それまではっきりしていなかったチームというものを理解することができた。必要に応じて病棟に自由に入りナースや医師と話し合ったり、患者と会ったりしている姿を見ることができた。また毎日の申し送りやミーティングに各スタッフが集まることで、チームの一員であるという気持ちが生まれるのではないかと思った。チーム医療は緩和ケアの中だけではなく、今後もっと広げられていくべきではないかと思った。

興味を持っていた宗教については、チャプレンと話したり実際の活動を間近に見ることで理解できたと思う。スピリチュアルペインというものがどのようなことなのかはっきりしていなかったが、宗教的に考えることでなるほどと思えた。チャプレンは魂の痛みと言っていたが、そこに対してチャプレンが関わっているということを話して下さった。私が勤務している病院の緩和ケア病棟では特に宗教的関わりは行っていない。しかし、逆にスピリチュアルな部分にはどのように関わっているのかということを尋ねられたとき答えられなかった。自分の死を間近に感じた人はスピリチュアルな部分で悩むことが多いのではないかと思った。信仰を持っている、いないにかかわらず、チャペルに集まったり、チャプレンと話をしたりということが自然に行われていた。今考えてみると、死に直面したときに信仰を持っているということが支えになるのではないかと思う。信仰については今まで興味も関心もなく自分にとっては必要ないものと考えていたが、信じるものを持っていることが大きな支えになることがあるのだというのが今の素直な気持ちである。

短い期間であったが、様々な方々と出会い、話を聴かせていただくことができた。患者とも話をしたり、廊下を一緒に歩き回ったり、マッサージをしたり、ただ側についていたりと自分なりにできることを行っていった。その中からその人の気持ちを少し垣間見ることができたような気がした。自分の死を間近に感じるという危機的状況の中でも私に優しい言葉を掛けて下さったり、何気ない言葉で私自身が癒されることもしばしばあった。人間の本質的な強さを感じることができた。

緩和ケア病棟は設備的にも人員的にも恵まれていると思う面も多くあったが、基本的には一般病棟でもどこにいても看護は変わらないということを実感した。

 

おわりに

 

様々な刺激を受け、自分なりに考える機会を与えていただいた研修だった。何よりも多くの人たちと会うことができたことは、自分にとって大切なことであったと思う。講師の方々や実習先で温かく迎えていただいた方々。そして、同じ目的を持ち集まった研修生。私達の学習を陰で支えて下さった研修所の先生等。私が日々病棟で感じていた疑問を察知し、研修に快く送りだして下さった職場の方たちにも感謝の気持ちでいっぱいである。多くの人たちと関わりを持ち、支えられて生きているということを実感し、ありがたさを感じた研修期間であった。今後病院に戻り、どれだけ研修で学んだことを活かしていけるかということはわからないが、無理をせず今自分ができることを日々精一杯行っていこうと心に決めている。

 

 

 

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