2-3) 治療的コミュニケーションの技術
1] 積極的な傾聴
・話し手としての役割を捨てて、聞き手の役割をとること。
・あらゆる感覚を集中させて、判断や評価を差し挟まないで熱心に耳を傾けて相手の話をよく聴くこと。
2] 理解すること
3] 治療的な対応
・看護者の対応には、応答と誘導の2つの方法があり、治療的な応え方は応答である。
4] 怒りの理解
・怒りの表現には不安や苛立ちが隠されていることが多く、怒りに反応するのではなく、怒りの原因を患者自身が明確にできるような対応が必要である。
5] 患者の側にいること
・黙って患者の側にいることだけでも癒しになる。沈黙の意味を知り、うまく使う。
6] 空間距離
・空間をうまく利用することは効果を高める。
3-1) がんに対する患者の通常反応
第1相;初期反応(2〜3日)
ショック・否認・絶望
第2相;不快(1〜2週間)
不安・抑うつ気分・食欲不振・不眠・集中力の低下・日常生活への支障
第3相;適応(2週間で開始)
新しい情報への適応・現実的問題への直面・楽観的見方ができるようになる・活動の再開、開始
精神療法的介入:
1] 病気に対する感情(不安・恐怖)表現を促す
2] 病気に関して現実的な範囲で励まし、保証を提供する。
3] 過去の死別体験との関連として現在の置かれた状況を探索する(過去の喪失体験にどう対処し、どういう結果となったか)。
4] 感情、行動、不適応の状態を明確化し解釈して伝える。
5] 将来に対する不確実感や実存的憂慮に対処する方法を共に模索する。
6] ストレスとなっている未解決の問題(家庭内の問題、仕事など)を探る。
7] 教育的側面:現在の身体的状態や今後治療や検査によって引き起こされる身体状態や情緒的反応を明確に繰り返し説明して、無駄な誤解・先入観を解き、助言・指導を提供する。
3-2) がん患者の家族への援助
○家族援助を考える前提としてのおさえ
・ナースは家族ではない;家族の役割を侵さない、取らない。
・患者と家族を一単位としてとらえ援助する。
・問題解決の当事者は「本人と家族」;ナース自身の価値観を押し付けない。
・「生きざまが死にざま」;家族として生きてきた歴史の影響・結果が現れる。
・家族関係が輻輳している実態を把握し理解;家族関係は単一でない。
○家族援助の視点
1] 「家族全体としての人生」を完結するという視点で援助する。
2] 「死別・喪失に直面」することへの援助。
3] 死別後の援助。
考察
講義をされた先生方の多くが、現在の緩和医療では90%以上の痛みは解放できるといわれた。コントロールしにくい症状としてはニューロパシックペイン・食欲不振・全身倦怠感等である。ある先生に至っては「今後の課題はコミュニケーションと家族援助である」といわれ、ある雑誌には告知をするかしないかではなく、いかに事実を伝え、その後どのように患者に対応し援助してゆくか、告知の質が問題であると書かれていた。緩和医療の世界では次の問題に取り組んでいるご時勢に、告知や疼痛コントロールで悩んでいる我が病棟は大きな遅れをとっていると強く感じた。グループワークで症例検討を行っているとき輸液の弊害を指摘された。消化器病棟では何らかの原因で食事を摂取することが困難となっており、多くの患者に高カロリーの輸液が投与されている。