日本財団 図書館


1-2) 緩和ケアの実際

1] がん疼痛治療:「がんの痛みからの解放」は、「全人的痛み」の観点から提唱された「がん疼痛治療法」である。

2] がん疼痛以外の諸症状のコントロール:痛み以外で、がん終末期患者にみられる症状は、全身の倦怠感、食欲不振、呼吸困難感、便秘、嘔気、嘔吐が頻度の高い症状である。また、がん患者では不安、うつ状態、せん妄の占める割合が高く、これに対する対応が重要である。

 

1-3) 生命・看護倫理とは行為の選択についての問い:「この場合はどうすればよいのか、どうするべきか」

医療の専門家は、

1] 自分がしていることを説明できるくらいに自分で理解していなければならない。

2] 無意識に持っている倫理的な考えを吟味して、妥当なものへと洗練しておく。

3] 難しい状況にも対処できるような知(単なる知識ではなく考える力)を備えている必要がある。

○意志尊重の順序についてのルール

Rl:患者に対応能力がある場合には、その意志(自己決定)を尊重する。

R2:患者に対応能力がない場合には、その代理人の意志を尊重する。

R3:患者に対応能力がなく、代理人もいない場合には、患者にとっての最善についての客観的判断による。

R4:Rl〜R3による決定が第三者に許容範囲を越えた害を及ぼすことが推定される場合には、その決定は無効となる。

○積極的強行と消極的強行の区別

AO:医療は、ぜひ必要な行為と判断することであっても、患者側が拒否している場合には強行してはならない。

PO:医療者は、不適当と判断する行為を患者側から要求された場合に、拒否することはできる。

○緩和医療の原則

緩和医療がなされる終末期の場合には、余命の長さよりもQOLの保持を優先する。

○対応能力のない患者への対応

相手に対応能力がない場合であっても、人間として尊重し、相手がその現実の状態に応じて、それなりに理解し、同意して医療が受けられるようにコミュニケーションを保つ。

 

2-1) 症状コントロールの10基本原則

1] 治療の前にまず患者の病態を検討する。

2] 病状の原因と成り立ちについて解りやすい言葉で患者に説明する。

3] 選択可能な複数の治療法について患者と話し合う。

4] 治療の内容を家族に説明する。

5] 症状が持続的な場合は、症状の再発を予防する方法で薬を投与する。

6] 治療は単純な方法で開始し、複雑なものは後回しにする。

7] 治療は薬剤だけに限定しない。

8] 治療が期待どおりの効果をあげない場合、同僚や専門医の意見を求める。

9] 患者・家族への現実的で配慮の行き届いた指導が必要である。

10] 治療方針の見直し、見直し、見直し。

 

2-2) 目標指向的ADL訓練

1] 主目標・副目標・基本方針の明確化:「目標指向的アプローチ」

2] 能力障害レベルの訓練の対象の拡大:ADLに加えて

・社会生活行為

・実用コミュニケーション能力

・職業能力

・余暇活用能力

3] 「環境限定型ADL」から「どこでも行えるADL」へ

4] ADLと移動とを一連のものと位置づける

5] 「するADL」向上に向けたADLプログラム

6] 実際の生活の場・時間帯での評価・訓練の実施

7] 自立に向けた介助の重視

8] ADL向上に向けての機能訓練:複合動作・基本動作・要素機能の階層性の重視

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION