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研修の学びと自己課題

 

千葉県がんセンター

草刈 聡子

 

はじめに

 

私の所属するセンターは、「がん患者さんに最善のがん医療を提供する」ことを理念としています。がんの治療においては、治癒や延命のための集学的治療が様々な分野で研究され行われてきました。患者さんや家族も、治療を目的として来院しています。治癒や延命中心の医療から、緩和医療を考える医師や看護婦も増えてきています。2年前に、病棟で対応困難な症例のコンサルテーションを目的とした、緩和ケアチームを発足しました。そして今年度は、コンサルテーションに加えてシステム作りを目的としたチームが、再編成されました。現在自分は、病棟に所属しながら、週1回このチーム活動に参加しています。日頃の実践の中で、理論的な思考能力に欠けていることから、チームのメンバーとしての役割を果たせていないことにジレンマを感じていることが多かったと思います。

今回6週間の研修から、自己の看護を振り返り今後の課題を明らかにすることができたので報告します。

 

本論

 

1) 緩和医療の必要性と重要性

近年、がん医療においての緩和医療の必要性と重要性が認められるようになってきた背景として、3つほどの理由が考えられていることを学んだ。

1] がん医療や臨床研究の進歩に伴い、治療の限界が明らかになってきている。したがって、従来の治癒を目的とした治療のみでは、患者・家族の要求に答えることは難しく、がん医療の新たなあり方が求められている。

2] がんの診断や治療に関する情報が、広く普及してきている。従来の「お任せ医療」から患者の意志を尊重した「自己決定の医療」へ、変化せざるを得ない。

3] 急速に高齢化社会に移行していく中、限られた医療費を適正に配分することが求められている。

この3点を学んだ時に、県の施設としてがん対策の中心的役割を担うセンターが、緩和医療に取り組むことの必要性を感じた。WHOの示すがん治療と緩和医療のあり方からも、がん対策の中に緩和医療も含まれていると考えられた。そして、緩和ケアの考えは、がんの患者さんばかりではなく、慢性疾患でも治癒不可能な患者さんへのケアにも同様に適応できる。終末期の患者さんの中で、緩和ケア病棟やホスピスへ入院できる患者さんは、現在で1,131人であり、地方によって差がある。そして、施設への入院は、がんとAIDSの患者さんに限られている。これらの現状から考えると、ユニットがなくても緩和ケアの提供は、必要となってくることが考えられた。緩和ケアを実践するのみならず、啓蒙活動についての必要性も考えられた。

 

2) 適切な症状マネジメント

「症状」はその人が体験している主観的なものであり、医療者は患者の体験(症状)を正確に理解し、専門家として科学的にメカニズムを明らかにしたり、妥当なマネジメントの方略を提供し、患者がもっと良い方法を選ぶことができるように支援することが必要であることが言われている。

 

 

 

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