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私が考えていた症状マネジメントと講義の内容とは、あまり違いはなかったように思います。要するに、患者の痛みや吐き気はどのような原因で、どういうメカニズムで起こっているのかを分析し、この場合の看護はどのようにしたら良いのかを考えていくことです。

しかし、違っていたのは、症状をマネジメントする概念モデルがあることです。私はこのモデルを知りませんでした。このモデルは症状を一つ一つ詳しく具体的に見ていくのにはとても良いと思いました。このモデルは患者にインタビュー方式で、今ある症状やその症状をどのように感じているかなど詳しく聞いていきます。まず、症状の体験のところでは、患者が感じていることをありのまま受け止め、患者が客観的に自分の症状をどのように感じているのかを知り、その症状によって引き起こされている、違う不快な症状なども聞いていきます。次に患者はその症状に対してどのようなアプローチをしているのかを聞いていきます。その中で医療者は何をしてくれるのか、家族はどうなのかも同時に聞いていくので、結果的には、今症状がどの程度コントロールされているかが分かるし、患者さんの満足度も分かって良いモデルだと感じました。そして、このモデルを使うには、症状のメカニズムがきちんと分かっていないとできないことから、個人の学びにもつながると思いました。緩和ケアに入院してくる患者の多くは他院からの方で、病状が進行していてもはっきりとした症状の診断がつきづらいことがあります。そのような時、自信のない症状へのアプローチになりやすいので、何か良いマネジメントの方法はないものだろうかと思っていましたので、参考にしていきたいと考えています。

 

5) リハビリテーションについて

「リハビリテーションとは」と言われたら、たぶん誰しも、『機能回復訓練』と言うと思います。しかし、今回初めてリハビリテーションとは、『体力の消耗を最小限にとどめつつ、必要なADL動作を行えるように、適切な動作の仕方、適切な補助具の使い方を指導することによって、直接ADLを向上させ、それによって家族復帰を実現するなどQOLを向上させることを目指して行うもので、「障害を持ったために人間らしく生きることが困難になった人の“人間らしく生きる権利の回復”すなわち“全人間的復権”」である』ということが分かりました。私にとってこのことはとても意味のある新しい発見でした。看護婦に課せられたリハビリテーションの重要性を再確認しました。残された筋力をどのように、どのことに使っていくかを考えて動くことが大切であり、それを適切に指導、介助できれば患者さんのしたいことを安楽にさせてあげることができると考えます。これから、私の病棟の中でも、このリハビリテーションの考え方を伝え、より良いリハビリテーションができるように、もう一度リハビリテーション・ガイドブックを読み返して学びを深めたいと思います。

 

おわりに

 

今回の研修では、私が知らなかったことや、考え方が違っていたことなどが多くあり、とても勉強になりました。そして、私が働いている埼玉県立がんセンターの緩和ケア病棟は症状緩和中心の緩和ケアを行う病棟であることも、自分自身の中でははっきりと分かりました。がんセンターを母体にもつ緩和ケアならではの『がんによって起こるさまざまな苦痛症状や難治な症状の治療・看護を行うところ』であると考えています。緩和ケア病棟における看護婦の役割は、多用であり重要です。患者さんの身近にいて精神的な変化や身体的な辛さをすぐに感じられる私たちが、患者さんが苦痛なく、日々その人らしく生活できるように、緩和ケアに対する技術や知識をもって看護していく必要があると感じています。知識に裏付けられた優しさと苦痛を伴わないような熟練した技術を身に付け、緩和ケア病棟の中だけでなく、どこの病棟へ行っても緩和ケアを行えるようになりたいと思います。私の目指す緩和ケアにはまだまだ遠い私ですが、日々努力していきたいと思います。

 

 

 

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