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二度とこない「今」を大切に生きること

 

群馬県立がんセンター

布施 裕子

 

はじめに

 

私の勤務する病院は、建物の老朽化により、平成13年に建てかえる予定で準備を進めている。その際、病院内独立型の緩和ケア病棟を建設することが決められた。私は以前より緩和ケアに関心を抱いていたため、この研修を希望し、受講できることとなった。

私が勤務している外科病棟では、試験開腹術や姑息的な手術後、ターミナル期に移行し、亡くなられる患者さんがいる。外科的に治療し、治る患者と終末期の患者が混在しているため、終末期の患者さんのケアが十分できないのが現状である。

以前、満足できたターミナルケアと悔いが残ったターミナルケアについて事例検討をした際、悔いの残ったターミナルケアは患者の自己決定権やインフォームド・コンセントなどの倫理的問題が絡んでいることがわかった。そして、看護婦に直面した倫理的問題について調査した結果、多くの看護婦が患者の症状コントロールや知る権利、自己決定権など自分と同じ倫理的ジレンマを感じていることがわかった。私はこの研修で、患者の倫理的問題への対応や症状マネジメント、チームアプローチについて学びたいと思った。

今回、この6週間の研修を終え、学んだことについて報告する。

 

研修の目的

 

私はこの研修に参加するにあたり、次の目標を立てた。

目的:緩和医療における系統的知識を身につけることによって、実践にいかすことができる。

目標:

1. 緩和ケア病棟における看護婦の直面する倫理的問題とその対応方法について学ぶ。

2. チームアプローチが円滑に行われるための具体的方法を知る。

3. 症状コントロールについての知識、技術を身につける。

4. 家族への援助、遺族ケアについて学ぶ。

5. コミュニケーションスキルについて学ぶ。

 

研修を通して学んだこと

 

1) 緩和ケア病棟における看護婦の直面する倫理的問題とその対応方法について

私の勤務している外科病棟では、病名告知はほとんどの患者に行っている。しかし、試験開腹術や姑息的な手術になった場合、真実を患者さんに知らせないことが多い。私は、患者に真実を伝えなければ、本当の意味で患者を支えることはできないと考えている。そのため、患者は手術をしたのに何故良くならないのかと不安を訴えるケースが多い。私は、そのような状況の際、倫理的ジレンマを感じる。

ホスピス実習中、Hbが5.6mm/dlとかなり強い貧血状態であった患者に、医療スタッフは輸血を勧めた。しかし、患者は、もう輸血はしたくないと訴え、押し花教室に通い、向日葵や紫陽花、小さな花で、はがきやカード、壁掛けを作るなど熱心に活動されていた。この患者さんは今まで、患者自身が医師からの病状説明を聞いており、今までのいろいろな問題にも、一人で対処していた。医師、看護婦はこの患者のQOLを考えて、輸血を勧めたが、患者の意志を尊重し、自己決定を支えるという方針を決めた。

 

 

 

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