日本財団 図書館


4) 症状コントロール

緩和ケアにおいては、身体的な痛み、精神的な痛み、社会的な痛み、霊的な痛みに対するそれぞれの癒しが大切であり、末期患者がその人らしく生を全うできるように援助すること、患者のQOLをできるだけ高めることが求められる。そのためには、症状コントロールがうまくいっていることが大切であり、患者の体験している自覚症状を私たち医療者側はキャッチできなければならない。

それをどのようにキャッチしていくのかについて、看護の三大基本の一つである安楽について講義の中で、この苦痛を緩和すること、安楽にするとはどういうことか、考える機会を与えられた。安楽のニードは、1]より快適であること、2]苦痛がないこと、3]個人の成長を促すこと。安楽の感覚は、1]癒されている状態、平和で満たされている、2]安らいだ感じ、不安をとりのぞいた状態、3]回復した感じ、強くなって元気づけられた状態、と分析する中から患者の訴えに対し、ひとつひとつどういったアセスメントをし、ケアをしたらよいのか学ぶことができた。

患者が何を望んでいるかを学ばせていただいた。麻薬の適切な使用法について知識をもつこと、医療チームの連携を保つことが重要である。

 

5) 家族ケア

これまで、家族についてきちんと概論的に考えたことがなく、家族は家族という単独での援助対象と考えていたが、患者・家族の両者をひっくるめて援助対象とする、一単位としての家族という考え方が必要であることを学んだ。家族の定義は、社会学、看護学ではとらえ方に違いがあり、看護学での家族は、お互いが家族と認識しあっている、絆を共有している2人以上の成員から成る集団ととらえ、お互いがかけがえのない者としていれば、家族ととらえて援助の対象と定義している。日頃から家族にかかわっていながら、これまで家族援助を看護計画にあげることをおきざりにしてきたことを反省させられた。家族を対象にした看護過程では、情報収集、問題の明確化、計画立案、実施、評価と患者同様、家族援助の重要性を再認識した。

家族援助の実際についての講義では、事例をもとに家族関係図を書いてみることで、患者をとりまく関係がみえてくることや、どのようにかかわったらよいのかが整理された。問題解決の当事者は本人と家族である。これまで自分の中で問題解決を考える時、こういうかたちであってほしいという理想をおしつけがちであったことを反省している。このことに気づき、これまでのかかわりをふりかえることができた。

終末期の患者の家族は、患者を精神的に支えなければならない。家庭と病院との生活によってかなりの負担が強いられる。実習において、問題解決の一つの方法として、コミュニケーションのとり方として、感情を出させるような会話をもつと良く、会話の中に感情を表わすことばを入れると、心の条件をととのえられるというアドバイスをいただいた。

家族ケアのはじまりは、入院時からはじまっている。入院時にカンファレンスに家族の方にも参加していただき、病状経過、緩和ケア病棟を希望した理由、今後の希望、看護ケアに対する問題、要望の確認などをすることで、スタッフとの共通認識、理解することに努力している。家族もここでは自分たちの役割を確認しながら、信頼関係を築いている。患者の病状悪化に伴い、身体的には看病疲れが出やすく、精神的にも患者が死に近づいているという悲嘆などの問題が生じやすくなり、プライマリーナースを中心に、その時々に応じて看護介入することを忘れてはならない。

 

おわりに

 

6週間の研修で、講義と実習からこれまで緩和ケアについて自分自身がばく然ととらえていたことの裏づけを得ることができ、同時に新しい学びや驚き、そして自己のふりかえりをすることができた。実習では、緩和ケア病棟での実際の看護ケアを学び、ハード面のみでなく、ソフト面での質の向上が大切であることを再確認し、実際に見たり聞いたりしたことは、今後のよい参考になった。私にとって今回の研修での経験は、緩和ケア病棟開設に向けての準備をすすめていくうえで、大変貴重な時間であった。研修で学んだことを役立てるとともに、自分だけのものをせず、他のスタッフに伝え、共有し実践へと結びつけられるよう努力していきたい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION