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2) 生命倫理

緩和ケアにおける医療の倫理として、WHOによる規定では、

「緩和ケアとは、治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患をもつ患者に対して行われる、積極的で全体的な医療ケアであり……最終目標は、患者とその家族にとってできる限り良好なQOLを実現させることである。……緩和ケアは末期だけでなく、もっと早い病期の患者に対しても、がん病変の治療と同時に適用すべき多くの利点をもっている」と述べている。人間は自己決定権をもっている。病気になった時、人間はできる限り自由だが、他の人に迷惑をかけてはいけないと考える。医療者は、この人権意識と患者の自己決定を重複するという2つの原理で動いている。

倫理は、人間の活動ないし生活のあらゆる場面にかかわっている。私たちは、通常それを意識しないで活動しているけれども、その際にも倫理は生きている。そういう人間の活動のなかで、とくに看護活動における倫理について考える際には、看護の専門家が看護という務めを果たしているという点に注目して考える必要がある。看護活動する者が、その倫理的側面についてよく理解して身につけておくべき事項として、1]看護における倫理的な知の必要性、2]具体的な看護活動に際して基本的に押さえるべき倫理的原則を分析・整理する、3]倫理的知識を日常の現場でどう生かしていくかが大切であることを学んだ。

尊重すべき患者に向かって、いい加減な慎重さに欠けた対応をせず、専門家として知識や技術を発揮する姿勢をもつことが大切である。患者の家族に対しても、同時に共同の行為に参加しているケアの対象者であるという位置づけをもっていることも大切と考える。

 

3) チームアプローチ

緩和ケア病棟では、患者の残された人生の質を高めるために、それらの基本的ニーズ(身体的、精神的、社会的、霊的)を満たしていくことが大切である。チームアプローチの講義では、緩和ケア病棟にはチームアプローチが必要であり、重要であるということをグループワークの中で学ぶことができた。緩和ケアをどうとらえるか、ゴールは、方向性はと問われ、これらのことは明確にしてチーム間の共通理解をしておくことが必要であることを学んだ。

緩和ケアブースとして何を期待され、何がしたいのか明確にしておく必要がある。施設の中での緩和ケア病棟の位置づけや、何のために緩和ケア病棟を設置するのかは重要である。医療チームの各専門性を理解し、その職種の人が何をしてくれるのか、期待していいのか、医療チームの中で看護婦はこういうことをしますということをアピールできることも大切である。患者に何か問題が起きている時、その問題に反応して対処、行動を起こし援助提供ができる、このあたり前のことが自然に行われるようなチームづくりを考えていかなければならない。自分の思いこみ、他職種の人からの情報を得ようとする努力に欠けていなかったかと、これまでの自分を振り返ることができた。チーム内に不一致が起こり意見のくい違いがあると避けようとしてしまいがちになるが、このことがどれだけ患者にマイナスになるか考えていかなければならない。そのためには、チームメンバーが何でも言えるようなカンファレンスをもち、理解的態度で傾聴し、問題の本質を明確にすることが必要だと学んだ。チームアプローチの中心となる看護婦の重要な役割と考える。カンファレンスの円滑なすすめ方については、実習での学びを今後役立たせてもらいたいと思っている。チームの一人一人がそれぞれの職種の専門性を理解し、責任をもってかかわれるチームづくりをめざしたいと思う。

 

 

 

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