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緩和ケア病棟の開設に向けて学んだこと

 

栃木県立がんセンター

堀添 美恵

 

はじめに

 

当センターに新棟建設が決まり、新棟に緩和ケア病棟を開設することが決定してから、施設見学に行ったり、勉強会を開いたりしながら開設準備をすすめてきている。がん専門病院ということもあり、終末期の患者にかかわる機会が多い中で、緩和医療にかかわっていながら患者・家族は満たされたのだろうか、不満はなかっただろうかという思いにぶつかっていた。これから緩和ケアに携わっていくために、緩和医療の基礎を学び、症状コントロールについての知識を深めるとともに、看護婦の役割を理解し実践できる能力を身につけたいと考え、この研修に参加させていだいた。6週間の研修を終え、講義および実習において多くの学びを得ることができたのでまとめる。

 

研修目標

 

1) 緩和医療の基礎を身につけ実践できる。

2) 症状コントロールについて知識を深める。

3) 緩和ケア病棟開設に向けて、必要な情報を収集し、分析し、自分の施設に活用できるものを得る。

4) 家族とのかかわり、家族ケアについて学ぶ。

 

研修で学んだこと

 

1) 緩和ケア

近年、がん医療において、緩和医療(緩和ケア)が関心を集め、その必要性、重要性が認められるようになってきた。日本の現段階での緩和ケア施設は57施設が認可されている。志真先生の講義において、こうした背景として、医療側の変化、患者側の変化、社会側の変化として3点の理由について述べられた。医療側の変化として、従来の治癒を目指した治療のみでは、患者・家族の要求に応えることは難しく、がん医療の新たなあり方が求められている。患者側の変化として、がんの診断や治療に関する情報が広く普及してきていることから、がん告知も徐々に広がり、従来の「おまかせ医療」から、患者の意志を尊重した「自己決定の医療」へと、がん医療が変化している。患者と家族は人間として尊重され、苦痛が取り除かれる医療を望むようになってきている。社会側の変化として、わが国は今後急速に高齢社会に移行する。社会の高齢化は、がん治療の選択、医療システムのあり方などがん医療全般に大きな影響を及ぼす。わが国では、多くの人たちが、緩和ケア(ホスピス)を「死を迎える場所」とのみ考える傾向が強い。緩和ケアは、症状コントロール、精神的ケア、家族へのケアなどを含んだ臨床的な考え方として理解する必要がある。

緩和ケアの役割は、まず第1に、がん疼痛の治療があげられる。これは、緩和ケアで最も重要な医療的要素である。第2に、がん疼痛以外の苦しい症状、例えば呼吸困難、食欲不振、嘔気、嘔吐など患者を苦しめるさまざまな症状に対する対処があげられる。第3は、患者および家族の心理的問題に対する適切な援助があげられる。第4に、患者や家族の抱える社会的、経済的問題。第5に、患者の死に向かう過程における不安や恐怖、そして葛藤といった人間存在に関わる霊的問題への対処である。これらにどう取り組むかが、今後の重要な課題である。

私の施設ではまだ準備段階であるが、緩和ケア病棟の位置づけを地域もふまえて考えていかなければならないと考える。患者自身の本音と建て前の部分を理解し、QOLを高めるために、自分がケアする人の期待、欲求が本当に現実的なのか判断し、現実的な希望をさまざまな方法をもって、達成させていける援助が大切であると考える。患者がどうしたいのかということが、最も基本的な考え方であると改めて感じた。

 

 

 

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