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5) 症状コントロール

「症状は、その人が感じる主観的なもの」である。症状を主体的にマネジメントするのは誰? それは医師、看護婦ではなく患者自身であるといわれる。この講義では、患者主体の症状マネジメントについて学んだ。

症状のコントロールは、緩和ケアの柱になる。それは看護婦の責任であり役割であるともいわれる。実践の場面で症状のコントロールがうまくいかないと、看護婦だけで頭を抱えていたように思う。主体となる患者を忘れていたと気づいた。症状はいつも不快な体験で患者自身によって知覚するものであるから、患者と共に問題解決を図らなければならないし、感じているその患者自身の評価なくしては評価につながらないということに深く考えさせられた。看護婦はここで患者が症状を訴える時には、訴えをありのままに受け入れる姿勢、それに共感する態度、訴える言葉を正確な知識・判断力・柔軟な思考によって関わっていくことが要求されてくる。

症状コントロールは患者のQOLを支えるための大きな要因であることから、症状をマネジメントできる知識・実践力を高めていきたいと思う。

 

6) 家族を援助するということ

家族のケアを考える時、日々のケアの中でどうとらえたらよいのか、どこまで家族に入り込んだらよいのか、患者・家族の気持ちのすれ違いにどう関わったら、と悩むことが多かった。私は患者と家族という見方をしていたし、「どうにかしたい」「何とかしたい」という思いが強かったように思う。しかし、それは看護婦としての理想の家族観や価値観から出てくることであり、家族のとらえ方や役割を知ることで違った考え方ができるようになった。

看護婦は家族ではない。家族は「患者と家族の一つの単位」として考え、ケアを提供するということである。この家族を、家族援助論の講義から、家族発達論、家族システム論、対処論と理論的に理解することができた。家族の問題解決の当事者は患者と家族であり、看護婦は看護上の問題を明確化して家族が自立・成長でるきように見守ることが大切である。終末期にある患者を抱える家族も、その機能を見失いつつも成長・発達を遂げていることを知った。ここでは、看護婦が家族のどの部分に関わりケアをすればよいのかを学ぶことができた。

また、家族援助の実際からは、今までの血縁関係による「家族」の概念から、「お互いに家族として認め合っている」「精神的な絆を共有している」ことを家族とみなしている。看護婦として、ありのままの家族を受け入れることも必要なのだと思った。そして、家族が生きてきた歴史と家族全体の人生として考える視点を持つことが要求されてくる。実践の場面では、看護婦がケアのニーズを理解・共有するため、集めた情報を図式化すると大変わかりやすく、今後取り入れていきたい方法であると考えた。

 

実習について

 

2週間の緩和ケア病棟での実習があった。スタッフとしての立場ではなく、緩和ケア病棟を客観的にみることができて、講義と合わせながら多くのことを考える機会が得られたと思う。

国立の病院であり、私の病院も同じ公立であったので、特に宗教との関わりはない病棟での実習ができた。緩和ケア病棟では、ケアをする看護婦、看護助手の一人一人の中にホスピス・マインドでの実践があった。患者の入院の条件としてがん・HIVの病名告知がなされていた。看護婦は、患者がどのようなことを緩和ケア病棟に期待しているのかを知り、その人がその人らしく生きていけるような場をつくりあげていたと思う。

病棟では、ベッドサイドを中心として環境が整えられ、患者の希望への援助を行い、患者の生活習慣に基づいた方法を確認しながら細やかなところまで配慮が行われていた。あらゆる場面でコミュニケーションが重視されているという印象が強かった。例えばそれは、ウォーキングカンファレンスやプライマリーナーシングなどにも形としてみられていた。病棟スタッフ全員が1つのチームとして同じ目的に向かい、またチーム内でカバーができる関係が保たれており、チームのあり方を考えさせられた。

 

 

 

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