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2) 生命倫理

実際の医療の現場では、生命倫理を常に意識しながら看護が行われているわけではない。しかし、看護行為そのものをいつも倫理的側面から説明できなくてはならないということに考えさせられた。今回、臨床倫理の諸原則を学び、誰のための医療行為なのか、誰が主役で中心であるのか、誰の利益になるのかを正しく判断し看護を行っていきたいと思う。

緩和医療の倫理では、「対象となる人のQOLを高め、今後の余命期間にわたるQOLの積分を可能な限り高めること」を目指している。その人の人生の価値観や大事にしていることを知り、患者自身の自己決定(意志決定)を尊重し、その人らしく充実した人生が送れるような支援が必要になってくる。緩和ケアの場面では、倫理的ジレンマに悩むことが多いが、人間としての尊厳・充実した生を支えるために生命倫理の学びは大きいと考えた。

 

3) 緩和医療・ケアとチームアプローチ

緩和医療の講義では、その概念・理念等の基本的な考え方、そこにおける看護婦の役割について深めることができた。緩和医療は、特別な人の医療ではなく、普通の医療である。これからは緩和医療の専門性をどう創りあげるか、一般病院でどのように緩和ケアを行っていくのかが課題であるということであった。緩和ケアの3つの側面の1つである「チームワークとパートナーシップ」については、私の病院でも緩和ケアチームが少しずつ動き始めたばかりなので興味深く講義を聴いた。医師と看護婦のコアチームがうまくいかなければ、初めからうまくいかない、パートナーシップの積み重ねで信頼関係が築いていけること、それにはトレーニングが必要であることを学んだ。ホスピスと一般病院とは条件が違うにしても、チームをとろうとする意識、考え方があるかどうか、チームとしてトレーニングの必要性を感じているか等、チームの存在や目的、目指す方向が同じかが重要であって、場所の問題ではないということであった。今後の私の活動の励みになった。

またチームアプローチの講義でも、チームのゴールを統一すること、各種専門職のメンバーの立場を理解すること、理解的態度で傾聴し評価しないこと、問題の本質を明確にしていくことの重要性をグループワークを通して学んでいった。

緩和医療の講義の中で印象的だった1つは、死をプロセスの1つと考え、その中での患者の「希望」について考えさせられたことだ。希望は目標に限りなく近づく期待感であるという。患者の希望・欲求・期待が広がるほど現実とのギャップが広がり、それがQOLのギャップになるという。確かに私達は日頃、患者の希望と現実の間で悩むことが多かった。QOLは現実的修正の中で維持されるものと知り、現実的希望をケアを使って達成していくこともQOLを向上させる1つになるのだということを学んだ。

また、その緩和ケアには柔軟性、緻密さが要求されてくる。自分の固定観念にとらわれず、患者の状況を判断し、満足感の得られるケアを提供したいと思う。

 

4) がん患者の心のケア

精神腫瘍学では、患者の心のケアについて学んだ。日頃、がん患者が示す様々な精神症状に対し、知識が十分でないことからアセスメントができず、その対処にも苦慮することが多かったのだが、症状マネジメントの1つとして身体症状と同様の必要性を感じた。例えば、病名・病状を告知後の思考過程の混乱からふさぎこみ、うつ状態を呈した場合に、それを正常内の心理過程として心理状態をモニターしていくことがよいのか、専門家の協力を得て治療が必要とされる状態なのかを判断していかなければならないからである。このことは、がん患者・家族のQOLにおいても重要なことである。診断時から終末期まで、不安・抑うつ・せん妄等の様々な症状を把握、決して孤独感を感じないようケアに努めたい。この精神的援助についての理論が、観察、アセスメント、ケアへと実践に結びつくよう学び続けたいと思う。

 

 

 

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