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患者の「生」を支える緩和ケアであるために

 

福島県立医科大学医学部附属病院

保坂 ルミ

 

はじめに

 

緩和ケア、ホスピスケア、ターミナルケアの概念とその差異・共通する理念についてのレポートから私の研修は始まった。このレポートは、研修前の自己学習課題であった。

ターミナル期の患者の看護に携わりながら、患者のQOLの向上になるケアを提供したいといつも考えていたはずであったが、このような概念さえも漠然としか知らずにいたことに自分ながら落胆してしまった。

がんを告知された患者、治癒を望めなくなった患者や残り少ない「生」を全うしようとしている患者・家族に対し、看護の場面でとまどうことが多かった。その人らしい「生」「生活」「QOL」を支えるケアとはいったい何なのだろうかということがよく理解できておらず、不明確であったからである。このケアこそが「緩和ケア」であり、今こそ緩和ケアを学び、自分の中にあるものを明確にして看護婦としての役割を知り、実践していく必要があると考え研修にのぞんだ。

 

自己の研修課題

 

1. 緩和ケアに必要な一連の知識と技術の基礎を系統的に学ぶことにより、広く深い理解を得ること。

2. 質の高い緩和ケアの実践を行うため、私自身のみならず、看護婦・学生への支援(教育)を行うための能力を得ること。

3. 当院・地域社会を含めた緩和ケアのためのケアシステムの開発の可能性を探り、終末期患者・家族のQOLを主体とした研究を続ける原動力にすること。

 

研修で学んだこと

 

1) コミュニケーション・スキル

患者と看護婦の関係は、コミュニケーションによって成り立っている。それは言語的・非言語的コミュニケーションを通じての意図的な相互作用であるといえる。私達看護婦は、患者と向き合い、コミュニケーションに治療的意味を持たせるためにも、患者の表現に対し傾聴し、共感し、その背景にある「意味」をよく考えなければならないと考えさせられた。感情の50%〜70%は、非言語的コミュニケーションを通じて伝達されるといわれている。言語化された表現のみならず、声のトーン、調子、表情、仕草等一つ一つに注意を払い、特に緩和ケアの場面では、スキンシップ、沈黙も重要なコミュニケーションの手段として生かしていきたいと思う。また、看護婦が話すことがきちんと伝わっているかを確認することも大切なことであると考えさせられた。コミュニケーション・スキルの講義の中で、患者の「怒り」についての事例が示された。看護婦は、患者の心の揺らぎを理解し、患者自身が気持ちを語り整理できるよう(感情の明確化)にする援助が必要なのだと学んだ。

今後、患者とのコミュニケーションの中で積極的な傾聴に努め、癒しの関係ができるようコミュニケーション・スキルの上達のための学びを重ねていく必要があると考えた。

 

 

 

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