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現代においては家族の形態も様々で、昔のようにきめられた日にお参りをして、亡くなった人の思い出を皆で語り合うという慣習も少なくなりつつあるという。そういう慣習が家族のケアに重要な役割を果たしていたわけであるが、それが望めない場合は遺族訪問や遺族会の開催についても考える必要が出てくるだろう。

 

緩和ケアナースのメンタルヘルスについて

 

辞職率が高く、せっかく教育をしてもなかなか継続が難しい分野だということであった。あまりにも自分で抱え込まないことが必要であるだろうし、何でも話し合える職場の環境が大切だろう。また、婦長や主任が常にスタッフに関心を持ち声がけをしていくこと、適当な休日を取らせることも必要である。精神科の医師を招き全体で定期的にカウンセリングの勉強会をすることも有効であるとのことであった。24時間患者の側にいるナースだからこそ、自分自身も精神的に安定していることが大切になると考える。

 

おわりに

 

柏木哲夫氏はその著書の中で「看取るものも死を背負った、限界を持つ存在であることを認識し、それでも生かされていることを感謝しつつケアにあたるとき、お互いに死すべき存在であることを伝えあうことができ、お互いの生を支えあうことができるのだと思う」と記している(『生と死を支える』朝日新聞社)。

死は誰にとっても初めての経験であり、訓練することも、学ぶこともできない出来事であるという認識のもとに患者の前に座るとき、患者の持つ不安や孤独や恐れを共感でき、自分自身の価値観を患者や家族に求めず在りのままを受け入れることができるようになるのではないだろうか。ナースの原点に立ち返り、手と目を用いて患者を護るということを忘れないようにしたい。

 

謝辞

 

今回この研修を受けるにあたり、快く送り出して下さった総婦長さんはじめ職場の皆様、研修期間全体にわたりご配慮いただいた金子先生に心より感謝いたします。

 

 

 

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