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ボランティアに対しても“心を聴くボランティブ”教育が行われている。看護婦と同様、会話記録による訓練を主としている。ボランティアはまた、ボランティアとしての視点で患者を捉え、看護婦とは違った関係性をとることができる。衣笠ホスピスにおけるボランティアは人生経験の豊富な人が多く、時には看護婦以上に患者の心を癒す関わりを持っているのである。ボランティアの存在は、患者の生活に潤いと豊かさを与え、チームアプローチをしていく上でも重要である。そのための教育もまた重要であることを学んだ。看護婦、ボランティアだけでなく、病院全体が“傾聴”の姿勢を持ち医療に当たれることは理想である。

 

5) 緩和ケアにおける看護婦の専門性

緩和ケアにおける看護婦の役割として、1]患者の苦痛緩和と生活のマネジメントができる。2]家族の悲嘆へのケアができる。3]ケアの質の向上のために研究的態度がもてる。などがあげられる。

緩和ケアの最終目標は苦痛緩和ではなく、QOLを向上させることである。まずは身体的苦痛緩和が最優先され、次に、日常生活を安楽に整えることが重要となる。そのための知識・技術が看護婦には必要となる。基本的な看護技術が十分に発揮される場である。また、終末期において家族ケアは重要な位置を占め、それぞれの家族に合わせた計画的な家族援助が求められる。終末期では特に「患者を人に戻す」ことが重要といわれる。一人の人間として対峙するとき、看護婦一人一人が、自分の看護観をしっかりと持ち、常に自分自身の人間性を豊かにする努力も忘れてはならない。

 

今後の課題

 

1 緩和ケアに対する考えを広める

基本的な緩和ケアの考えも知らない現状である医療者をはじめ、一般の人にも理解を得ていく必要がある。

2 緩和ケアの推進

基本的考え、具体的な方法を学びながら、病院全体で緩和ケアが提供できるように推進していく。まずは、緩和ケアに関心のある医師、看護婦を中心に勉強会を実施し、緩和ケアを実践していく。

3 緩和ケア教育

衣笠ホスピスのように“傾聴”に焦点を当て、継続してトレーニングを行っていくということはとても大切なことである。衣笠ホスピスにおける教育プログラムを参考にし、人間の尊厳、看護のあり方など基本的なところから見直し、緩和ケアについての継続した教育がなされるよう計画していきたい。

 

今後の課題は数多くあるが、上記3点を中心に、将来に希望を持ちながら、一歩一歩自分のできることから実行していきたいと考えている。

 

おわりに

 

机上では学び得ない緩和ケアの実際を目にし、体験できたことは何よりも貴重な宝物であると感じている。この宝物を大切に仕舞っておくのではなく、多くの苦しんでいる患者・家族のために、また、その苦しみを取り除くことができず苦しんでいる医療者のために、役立てることができればと思う。人は皆、必ず死を迎える。人生で一度しかない、そして、完結のときをより豊かに迎えられるようにするために、看護婦の役割は重要であり、誇りあることであると実感した。また、自分自身の死生観、看護観についてあらためて考え直すよい機会となった。自分自身の看護観や人間性がまた少し豊かになった思いがする。最後になりましたが、実習を受け入れて下さった衣笠病院の南院長をはじめ、佐藤看護部長、安藤副看護部長、畠山ホスピス婦長、飯塚ナース、ホスピススタッフの皆様に深謝いたします。

 

 

 

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