日本財団 図書館


緩和ケア病棟における宗教の役割

 

川崎市立井田病院

武見 綾子

 

はじめに

 

宗教が緩和ケアにどのような関わりをしているのかということに興味があり、宗教法人である救世軍清瀬病院での実習を希望した。今回10日間ではあったが緩和ケアの実際に触れ、自分なりに緩和ケアについて考える機会となった。実習で体験したこと、感じたことをまとめてみたい。

 

緩和ケアチームについて

 

緩和ケアはチームで行われるということを講義でも何度も聴いていたが、実際にどのようなチームがどのように患者に関わっていくのかということはイメージがつかなかった。今回実習に行き、初めてチームで患者に関わるということを理解することができた。清瀬病院では日常的に様々な職種の方々が病棟に出入りし、患者に関わっていた。朝の申し送りや昼のミーティングはチームのメンバーが集まり行われていた。情報を共有化するということ、そして申し送りやミーティングに参加することでチームの一員という自覚が生まれるのではないかと思った。

緩和ケア病棟での宗教の役割ということに興味を持っていたが、チャプレンからスピリチュアルペインの部分に関わるということを聴き、実際の活動を知り、自分なりに理解できたように思う。「なぜ自分はこのような病気になったのか」「自分のことも自分でできず、生きている価値がない」「病気になったのは罰が当たったからだ」「人間はどこから来てどこへ行くのか」「本当に神はいるのか」「命とは何か、死とは何か」、このようなことがスピリチュアルペインとして考えられる。自分の死を間近に感じ、その中から生まれる苦しみがあるということを知った。それは日頃からの信仰の有無にかかわらず、生まれてくる魂の叫びのようなものではないかと思った。清瀬病院ではキリスト教の信者でなくても、チャペルで祈り、チャプレンとも自由に話すことができる。そのような環境の中で、自然にチャプレンに相談できる雰囲気を作り出していた。

自分は今まで信仰ということについては考えたこともなかった。日常的に祈る対象はなく、なんとなく自然の中に神がいるという考えを持っていたように思う。それは、日が昇ったり月がきれいだったり、遠くの山がはっきり見えたり、そんなとき自然に手を合わせたくなるからである。そして、多くの人がそうであるように寺にも神社にも行き、手を合わせるというそういう程度であった。今回キリスト教に触れ、宗教に対する自分のイメージが変わった。何か悲しいこと幸いことが起こったときは心の支えになるものではないかと思った。私自身は特に決まった信仰を持つことはないと思うが、信仰を持つ意味やパワーについて考えることができた。

今回の実習で初めてその働きを知ることができたのは、音楽療法士という職種であった。音楽療法という名前は聞いたことはあったが、それが実際どのようなことを行い、どのような効果を発揮しているのかということは全く知らなかった。デイルームでの集団に対するもの、個別と呼ばれる個室を訪問し行われるものが清瀬病院では行われていたが、今回それらに参加させていただき、音楽療法の力を感じることができた。特に印象的だったのは、個室を訪問するミュージックタイムでのことであった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION