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家族と医療者の間に何かしらの溝が生じていると感じたら、少しでも早い時期にその溝を埋める努力を医療者側から働きかけていくことが必要なのだと、今回の実習をとおして感じました。

 

また、全体をとおして感じたことは、一般のボランティアの導入がほとんどといっていいほどないことです。私自身、大学病院からホスピス病棟に勤務するようになってとまどったことの一つに、ボランティアの存在があったことは事実です。ホスピスで働いてみたいと思うようになって自分なりにいろいろ勉強し、ボランティアがホスピスにとってどれだけ重要な役割をはたしているのか頭では理解していたつもりでも、いざ、病棟の中でボランティアが患者や家族と普通に話をしているところをみたりすると、どうしても違和感を覚えることもありました。しかし、患者や家族は、医療者とは違う自分達と同じところにいるボランティアと話すことで、辛い闘病生活が温かいものになることがあるという話を家族から聞いたことがあります。

当病棟はボランティアに関して特別の教育をしているわけではありませんが、前病棟医長は、「ただ、そばにいて患者、家族の話を聞くだけでいい」と言っていました。「よもやま話をするおばさん」といわれたソーシャルワーカーの言葉もとても印象に残りましたが、患者、家族にとってはソーシャルワーカーもやはり医療者に変わりはないのです。

しかし、そこに自分達と同じ一般のボランティアがいることで医療者には言えないことも言えて、また中には家族をホスピスで亡くしたボランティアもいて家族の辛い気持ちを理解し、いい相談相手になってくれている方もいます。そういうところを経験すると、私達では補えない部分を補ってもらっていると思います。

そして、ボランティアが得た情報は、スタッフも共有できるように、カンファレンスにも参加できるよう促していく必要があります。そうすることで、ボランティア自身が「自分達もスタッフの一員なんだ」という自覚にもつながると思います。

ボランティアの導入は簡単にはいかないと思います。しかし、患者、家族にとってボランティアの存在がいかに大きいものかを理解できれば決して難しいことではないと思います。

 

実習を終了して

 

すでにホスピス病棟で勤務している私にとって、今回、他の施設で実習させていただいたことは、今後も今の病棟で緩和ケアを続けていくうえで、私にも、そしていっしょに働いているスタッフにとっても、今まで以上に成長していくよい機会になればと思います。

他のホスピス病棟を経験することで、自分の病棟のいいところと足りないところも明確にすることができたと思います。今回の実習で体験、経験したことを今後、実践の場で生かせていけるよう、スタッフに還元していきたいと思います。

最後になりましたが、お忙しい中10日間の実習を快く受け入れてくださった上尾甦生病院緩和ケア病棟のスタッフの皆様に感謝いたします。ありがとうございました。

 

 

 

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