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看護の基本がいかに大切か

 

NTT東日本関東病院

高松 靖子

 

はじめに

 

私の勤務している病院では、来年緩和ケア病棟が開設する予定であり、私も現在は一般病棟で看護を行っている。今回、研修の講義の中で緩和ケアが、特徴はあっても特別なものではなく、コミュニケーションやチームアプローチを大切にしてつくりあげていくものであることを学んだ。また症状マネジメントの方略を学び、これらのことが実際にどのように行われているか、PCUでの医療者の姿勢・役割、患者や家族の様子を知ることを課題とし実習に臨んだ。

<実習目的>

緩和ケアの実際を知り、講義で学んだ知識と体験を統合し、理解を深める。

<実習目標>

1 実習施設の理念・目的を理解し、ホスピスがどのような役割を持つのか理解する。

2 実習施設で行われている緩和ケアの実際を体験する。

3 ホスピスにおけるチームアプローチとその中での看護婦の役割を知る。

 

実習施設の印象

 

実習施設のPCUは厚生省の規定は満たしているものの、一般病棟とほぼ同じ構造であったが、いたる所に温かい空間を提供する配慮がなされていた。また、PCUを病院のシンボルと考え、病院全体で緩和ケアの気持ちを持って医療に臨む姿勢、病院の理念がスタッフもしくはボランティアの一人一人に浸透していることを実感した。患者のベッドサイドに行く時、スタッフの誰もが患者と同じ目線になり、温かく、しかし敏感に患者自身の思いを大切に、自分の意見を押し付けることなく接している様子が印象的であった。また、カンファレンスではチームで患者に対する共通理解を持ち、共通の目標に向かう姿勢を感じた。スタッフ間においても、患者との関わりにおいても正直に関係している印象を受けた。

 

受け持ち患者について

 

・プロフィール

Y氏 53歳 男性 骨肉腫 肺・骨転移 左下肢切断

全身性の痛みに対して入院前よりMSコンチン360mg、モルヒネ錠90mgを内服しており、コントロール良好。呼吸困難感に対して酸素3〜4l/分で調節している。移動は車椅子乗用し、移動動作は自力で可。性格は神経質。キーパーソンは妻で娘と3人暮らし。最期の時間を過ごすつもりでPCUへ入院。DNRの希望はあるが、細かな話し合いはされていない。

本人の気持ち;ここまで生きられるとは思わなかった。退院するつもりはない。何をやっても無駄。特別しなければならないことはない。病状のことを話すのはつらい。

<実践と考察>

一つ一つの処置に神経質で不安になるY氏とどのように関わればよいのか、研修生が関わることがY氏にどう影響するかについて心配になった。しかし、それも含めて看ていくこと、共にあることを大切に心がけ関わることにした。点滴や下剤など心配に思うことには速やかに対応し、説明したり、患者が負担に思うことは話し合って引き受けるなど、毎日の生活を少しでも不安少なく送れるよう支援した。

 

 

 

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