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不都合はないのだろうか?と思いましたが、看護婦がよく観察し、アセスメントを行い、早めに指示の変更が必要な場合にはすぐに連絡していました。

このことからみても、医師が常に病棟にいなくとも看護婦が患者さんの状況をきちんと観察し判断でき、薬の変更が必要であることなどを医師に伝えられることが大切なのだと分かりました。また、看護婦中心の病棟は看護婦の知識を深めることと向上心が必要だと感じましたが、坪井病院は各種勉強会が定期的に開催されていましたし、看護研究にも取り組んでおり、日々努力している姿が伺えました。医師が常勤していないことに関して長谷川先生も、「緩和ケアは看護婦さんが中心になる所だから医師が常勤している方がやりにくいと思うよ。いつも医者がいたら息が詰まるでしょ」と話されていました。医師も坪井病院の緩和ケアの在り方を分かっているんだと確認できました。私たちの病棟では専任医がいることと、その専任医が緩和ケア病棟できちんとした勉強をしてきていることから、看護婦が医師に頼りがちになる傾向があります。医師に頼ってしまい、患者さんの一番近くにいる看護婦が頼りにならないのでは仕方がありません。私たちも医師がやってくれることに甘んじることなく、学習し知識を高めていかなくてはならないと痛感しました。

次に、在宅療養についてですが、私の思っていたものとは少し違いました。坪井病院は地域に密着しており、地域の訪問ステーションとの連携も上手くいっているため、在宅に移行する方が多いのだと思っていました。しかし、訪問に行っているのは緩和ケア病棟の看護婦であり、訪問できない遠距離の方のみ各地域のステーションに依頼していると聞き、とても驚きました。坪井病院の緩和ケア病棟設立の主旨を聞けばなるほどと思いますが、病棟の看護婦自らが訪問に行くところは少ないと思います。これが、在宅療養をスムーズにしている理由だと思うのですが、私たちの病棟でいくら頑張ってもできないことだなとも感じました。訪問へは2名の方に同行させていただき、病気を持った方が家で過ごすことの大変さが少し見えたように思います。お二人ともとてもにこやかな表情をされており、自分の家で過ごせていることに満足しておられるようでした。しかし、それを支える家族の不安と負担は大きいので、家族の労をねぎらいながら患者さんの訴えを聞いていくことが大切であることを目の当たりにでき、とても勉強になりました。また、入院していた患者さんを退院しても継続してみていけることをうらやましく思ったと同時に、私たちの病棟と同じくらいの看護婦の人数で病棟と訪問を両方している坪井病院は凄いと思います。私たちの病棟で訪問看護をうけている患者さんは、いろんな医療機器が付いていたり、今しか帰れない状態だから帰ろうという方、地域のステーションの方が訪問に行く前に病院に戻ってくるような状況の方が多く、より充実した在宅療養とも言えませんし、患者さんが家で快適に過ごせるような深い関わりを地域のステーションに依頼するのは難しい現状です。しかし、坪井病院の訪問看護は訪問する時期が早く、患者さんがある程度は家で自分ができている状態から関わりをもてているので、家族環境もよく見えてくるし、患者さんとの信頼関係を築くのに十分な時間があることはとても良いことだと感じました。羨ましがってばかりもいられないので、在宅療養中の患者さんに定期的な電話連絡を入れるなど工夫し、できるだけ家族も患者さんも不安が少なく快適に療養できるように考えていきたいと思いました。

医療チームについては、医師と看護婦、看護助手、医療事務、MSW、牧師、ボランティアで構成されていました。「医師も何名も来ますので画一されたチームではないし、みんながみんな同じ方向を向いているわけではないが、同じ方向を向いていないのでかえっていろんな視点から患者さんをみれるので良い」と婦長さんからお話いただきました。本当に患者さんが最善の状態になるためのチームである必要があることを痛感させられました。患者さんが最善の状態でいられるのならば医師と看護婦だけでも良いし、たくさんのボランティアの人がいなくても良いと思えたことで焦りがなくなり、「できることからやればいいんだ」と思えるようになりました。

 

 

 

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