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患者さんの価値観を自分のものとして

 

埼玉県立がんセンター

松永 晴子

 

はじめに

 

私たちの緩和ケア病棟は、平成10年10月にオープンしたばかりの若い病棟です。スタッフのほとんどは緩和ケアについての知識もなく始まり、試行錯誤しながらケアを行ってきました。平成11年3月には専任の医師を招き、その医師からも緩和ケアについてさまざまな知識をえられ、その学びを学習会などで深めてきました。しかし、いつも「これで良いのだろうか」という漠然とした不安を持ちながら日々のケアを行っていました。そんなおりに、この緩和ケアナース養成研修に参加してみないかと誘われ研修に参加することになり、「在宅に根付いた緩和ケアの在り方」を学びたくて坪井病院の緩和ケア病棟に実習に行きました。その中で、価値観についてや病棟にある家庭という考え方などさまざまなことで考えさせられることがありましたので、実習の目標に沿って学んだことを述べたいと思います。

 

実習の目標

 

1 現在、私たちの緩和ケア病棟で行っている看護が妥当であるのか、また、長い間緩和ケアを行っている病棟ではどのような看護が行われているのか、その看護の中での悩みは何で、どのように改善してきたのかを知る。そして、私たちの緩和ケア病棟の看護の問題に対しての改善策の手掛かりとする。

2 在宅療養をどのように進め、地域とどのようにして連携をとっているのかを知る。在宅療養に移行できる患者さんが多いと聞いているので、何か工夫していることや地域との連携方法などを詳しく知り、今後の参考にしたい。

3 医療チームの構成はどのようになっているのか、各職種がその役割をどのように果たしているのかを知る。

4 緩和ケアにおける看護の専門性について考えを深める。

 

坪井病院の緩和ケア病棟に初めて行った時に、他の病院のような特別な施設ではなく、今ある施設に手を加えてできた所なんだということと、看護部長さんをはじめ婦長さんもスタッフの方たちも、とても暖かく迎えてくださっているなと感じました。ここでの2週間はとても楽しく、意義のあるものになりそうだと初日に感じられました。婦長さんから病棟の成り立ちを聞いた時は、「なんて意識の高い方たちなのだろうか」と感心させられたと同時に、いつでも与えられたものに異議申し立てをしながらも甘んじている私自身の姿勢を恥じました。また、病棟の在り方に関する考え方は、「病院のベッドではない、病院のなかにある家庭である」というものであり、看護婦の緩和ケアに対する考え方は、「看護婦が必要と判断してつくったホスピスであるから、ホスピスケアは看護婦がするのは当然のことである。家族が介護の中心であり、それを支えるのが看護婦の仕事である。決して家族以上に医療者が前面にでることはしない」と教えていただきました。

坪井病院は兼任の専任医と受け持ち医の体制をとっているため、医師は朝か夕方の回診までは来られない状態でした。しかし、患者さんの多くは症状コントロールができており、苦痛を強く訴えている患者さんは一部でした。私たちの病棟では医師が中心となって症状コントロールを行っているので大丈夫なのだろうか?

 

 

 

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