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医療者は痛みに対し、すぐに「薬を使いましょうか」と言ってしまいがちですが、そこで「少しさすりましょうか」とでも言えるようになりたいと思います。

3つ目は、リハビリをしている患者さんのことでした。ターミナル期の患者さんで、たとえ、機能回復が望めなくても、リハビリ室でリハビリをすることが患者さんの希望ならそれも良いし、もし、結果的に絶望することになったとしても、それまでがんばったプロセスが大切であり、がんばったけどだめだったというあきらめもつくのではないか。そして、そこで絶望した辛い患者さんを医療者が支えるということの大切さを教えていただきました。

4つ目は、外来でのホスピスケアについてです。ホスピスケアは入院してから始まるのではなく、電話相談を受けた時から始まっており、外来時もすでに始まっているということです。

患者さんや家族はとても幸い体験や思いを持っており、それを全て受け止め、問題点を明確にしていく。たとえ、それが解決できない問題であっても、一緒に考えていこうとすることの大切さを教えていただきました。

婦長さんの話では、外来受診をして、ホスピスへの入院を待ちながら亡くなってしまう患者さんも多いとのことでした。が、家族は「あの時、外来で話を聞いてもらえて本当に良かった」と感謝されることも多いとのことでした。まさに、ホスピスケアであるのだと思いました。

外来実習の時にも、辛い気持ちを涙で語る家族を見ました。このように、何でも表出できる場をつくることの大切さも学びました。

5つ目は、山崎先生の回診に付いた時のことです。

1人目の患者さんは、自分の思いや考えがなかなか言葉にならない患者さんでした。先生は「なにか○○さんの方から話したいことはありますか?」と問いかけましたが、患者さんが答えるまで長い沈黙がありました。この沈黙こそ意味があり、患者さんは自分の気持ちや思いを考え、表出できるようになるのだと思いました。

また、この患者さんは、日に日に体力が落ちてきていると自覚されていました。「元気がでない」と言う患者さんの手を先生は握り、パワーをわけてあげるという場面もありました。本当にパワーが伝わっているのではないかとさえ感じる、感動的な場面でした。医療者のフォローが患者さんの支えになっているんだと感じました。

また、別の患者さんは回診時、訪室すると呼吸状態が悪化してきていました。家族が付き添いをされていましたが、「知らないうちに息が止まっていたらどうしよう」と不安を話されました。それに対して、「眠るように旅立たれたなら、良かったと思えばいい」と先生は話され、家族の方も安心したようでした。

“物事をどう評価するか”という、すごく大切なことを教えていただきました。

その他にも、bad newsを患者さんに伝える場面や、息子さんの一周忌に自分の体が思うようにならないため、出られないことで辛い思いを持っている患者さんへの対応など、勉強になる場面にたくさん出会いました。

患者さんの部屋を訪ねる時、医師も看護婦も椅子を持参して、必ず座って話を聞く姿勢も印象的でした。また、医師と看護婦が一緒にまわることで、医療者側にもメリットがあるが、患者さんにとっても医師と看護婦が一緒に見てくれているという安心感がある、ということも教えていただきました。

その他、カンファレンスにも参加させていただき、カンファレンスをチーム全員が大切にしていること、カンファレンスは時間があるからするのではなく、必然性をスタッフみんなが感じているから行っているのだということも教えていただきました。

2週間の実習で、心のこもったホスピスケアが行われている場面にたくさん出会い、自分自身、強く心に感じるものがたくさんありました。患者さんや家族を本気で思い、何とか力になろうとする姿勢の大切さ、たとえ、それでも問題が解決しないとしても、そのプロセスが大切であり、患者さんや家族にとっては支えになるのだということを学びました。

その他にも、患者さんの尊厳を保つということがどういうことなのかや、ホスピスケアは特別な場所で設備がないとできないということはなく、このようなことから、どこでも行われるべきことなのだということも学びました。

 

おわりに

 

聖ヨハネホスピスでの体験は、私にとって本当に貴重なものでありました。これからの自分の看護観や考え方にも影響を与えるであろう、一生忘れられないものになりそうです。

今後、自分が緩和ケアに携わっていく時に、ここでの体験を生かし、患者さんと関わっていきたいと思います。また、当院での理念を再確認し、チーム全員が同じ目的意識を持ってやっていけることから始まると思うので、そこから一歩ずつ始められたらいいと思います。

最後になりましたが、実習中、お忙しい中、熱心にいろいろなことをご指導くださった、蛭田さん、黒川婦長さん、山崎先生、他スタッフの方々、たくさんの学びを与えてくださった患者さん、家族の方々、深く感謝しています。どうもありがとうございました。

 

 

 

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