日本財団 図書館


心のこもったホスピスケアとの出会い

 

石心会狭山病院

六反 勝美

 

はじめに

 

2週間、聖ヨハネホスピスで実習させていただきました。1週目は看護助手、ボランティアに付いて、2週目は看護婦に付いて、それぞれの役割を体験しました。その中で、初めてボランティアという立場で、白衣を着ないで患者さんと接することで見えてきたことがありました。また、看護婦を通して自分に欠けていたこと、気が付いたことがたくさんあり、多くの学びを得ることができましたのでここに報告します。

 

学んだこと

 

看護助手を通しては、看護婦が患者さんのケアをコーディネートし、より早く、より良いケアができるように、チームの誰に依頼するか考える。そしてチーム全員が、患者さんを中心に考え、協力していくことの重要性を実感しました。

ボランティアでは、患者さんと対等な立場であるという意味を再確認しました。今まで、そうあるべきだし、そうあろうと思っていましたが、白衣を着て患者さんの横に立つと、いつのまにか忘れていて、医療を提供する側と、提供される側という関係になっていて、一段上に立って患者さんを見ていたのではないか、ということに気が付きました。

それから、患者さんは病気になってたまたま入院してこられたけれど、普通に社会生活を送っている人であるという大切なことや、身体の一部を病んでいるけれど、24時間病人ではないということ、患者さんの価値観に添って、患者さんが過ごしやすいように環境や生活を調整する必要があるのだ、ということにも気付くことができました。

聖ヨハネホスピスでは、できるだけ病院らしくないように、患者さんが生活する場所として、細かな所へも配慮がなされていました。ボランティアの方の重要な役割、活動を知りました。そして、自分を振り返り、欠けていることにも気付く良い体験ができました。

そして2週目、看護婦に付いてからも感動的であり、かつ学びの多い場面にたくさん出会いました。

中でも印象的だった場面の1つは、苦痛症状をとるために、一時的なセデーションが行われる場面でした。どうしても倦怠感やイライラがとれなくて、その患者さんは「1時間ぐらい点滴してください。少し眠ると楽になるから」と言い、ドルミカムの点滴をされ眠られました。

この患者さんは、自分の苦痛をとるためのセルフケアができていました。それは、そのような方法があることを、医療者から提供されていたからできていたのであって、やるかやらないかは患者さんが決めるけれど、その方法があることは、医療者がきちんと提供していなければならないことの必要性を学びました。

2つ目は、痛みをとるのは薬物だけではないというのを実際に見た場面でした。音楽療法が行われ、患者さんは自分がリクエストした曲を終始うれしそうに聞いておられました。とても良い表情をされていました。が、演奏が終わると、「音楽を聞いている時は痛みを忘れているんだけどね」と言い、また腹痛が出現し、部屋へ戻って行かれました。音楽(自分のために弾いてくれている)が患者さんを癒すということを実感した場面でした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION