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緩和ケア病棟の開設に向けて

 

栃木県立がんセンター

堀添 美恵

 

はじめに

 

当院に、緩和ケア病棟を開設することが決定してから、私の周辺では勉強会をもつ機会が増え、施設見学なども計画されるようになり、緩和医療への知識を深めることが必要不可欠となった。自分の施設における緩和ケア病棟の位置づけ、理念をもつことが必要であり、そのための基礎的な考え方や技術を習得するため、緩和ケアナース養成研修を受講することになった。3週間の講義内容をふまえ、2週間の施設実習を体験することができ、1)実習施設での緩和ケアの実際を通して、自分の施設に必要な知識、技術、姿勢を学ぶ。2)緩和ケア病棟でのケアを行う上で必要な情報を収集し、分析することで自分の施設に活用できる。を実習目的とし、社会福祉法人信愛報恩会・信愛病院緩和ケア病棟において、症状緩和、チームアプローチ、患者、家族へのかかわりなど、多くの学びを得ることができたのでその内容をまとめる。

 

実習から学んだこと

 

1) 症状コントロール

緩和ケア病棟で行われる症状コントロールを考える時、まず、がん末期にある患者がその人らしく、残された生を全うできるよう援助することが重要になる。患者の苦痛を身体的・精神的・社会的・霊的な領域から把握し、全人的苦痛として理解することが求められ、十分なケアを提供することで、患者は自分らしさをとりもどすことができるといわれている。

信愛病院緩和ケア病棟においても、症状コントロールは医師の重要な役割であり、医師はまず、身体的な苦痛を緩和することを第一と考え、努力されているとうかがった。患者の苦痛を患者本人から聞き、それを緩和する方法を提示し、薬剤処方していく。処置を行う時は、時間調整も患者、家族に説明した上で希望を優先している。患者は、自分のことは自分で決めたいと思っている。病院という環境のなかでは、苦痛がある時、特に自分のコントロール感覚を失いやすいといわれる。ここでは、患者の自己決定を尊重している。私の施設では、医療者側が決定権をもってしまっているようなところが、まだまだたくさんある。ここでの医師、看護婦、患者、家族のやりとりをみて、患者主体であることを実感した。

 

2) チームアプローチ

信愛病院緩和ケア病棟では、医師・看護婦・ケアワーカー・MSW・薬剤師・栄養士・音楽療法士・理学療法士・作業療法士・チャプレンらにより、それぞれ専門的分野を生かして、患者の基本的ニーズを満たすことに努力されている。朝の申し送りやカンファレンスに看護婦だけでなく、医師・MSW・音楽療法士らが参加している。

ここではケアワーカーの業務として、看護婦とケアのために患者の病室に入り、声かけ、身体保清、おむつ交換などのかかわりがある。患者の表情、態度、言語、日常生活の変化を知ることができ、患者の訴えだけでない症状を知る手掛かりをつかんでいることを知った。ケアに入るまえに、看護婦から患者の情報を聞き、かかわり方を判断し、声の大きさや話し方まで配慮されていた。カンファレンスに参加することで得た情報を提供し、チームの一員としての役割を果たしている。

 

 

 

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