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患者さん自身も症状に対し、体位や食事制限等で主体的にコントロールしていました。患者主体の症状マネジメントを考え、身近にいる看護婦が主導権を持って関わっていくことが緩和医療には必要なのだと教えられました。症状のコントロールができれば、患者さんの「希望」である一時帰宅がかなえられますし、ADLも充実します。QOLには欠かせないことであると再確認しました。

よく患者は全人的に痛むといわれますが、私の知りたかったことの一つがスピリチュアルな側面でのケアでした。「私はどうしてこうなってしまったのだろうか」「死んだらどうなるの」という言葉がよく聞かれました。死を身近に感じていたようでした。患者さんはこのような時、よくご自身の人生を語って下さいます。今までは、患者さんから「死」という言葉を聞くと心の中で返す言葉に困っていたのですが、精神腫瘍学の講義の中で内富先生が話された「患者さんが誇りに思っている活動や業績をよく聴いて、機会をみてはそのことを賛えること。その人の過去・現在を共有し、そして未来に責任を持つこと」ということが心に浮かびました。スピリチュアルな因子は、人間の生の全体像を構成する一因子とみなされ、生きている意味・目的についての関心・懸念と関わっていることが多いといわれます。今回、その人のスピリチュアルな側面のケアは、その人の生きてきた、生きている、生きていくという「生」を共に感じ合うことなのだろうかと思われました。また看護婦が、自分の死生観を持つことの大切さを知りました。これからも進行がん患者さんの心理過程への援助を学び、心の状態を細やかに感じとり、しっかりと受けとめる力が必要だと考えました。

実習を通して感じたことは、緩和ケア病棟は特別な病棟というわけではなく、患者が中心、主体となる「生活」・「生」・「QOL」を支えることを中心とした、専門としたところなのではということです。

 

おわりに

 

緩和ケア病棟での実際の学びは、決して講義だけでは得られなかったところが多くありました。私もこれからは、しっかりとした理念を持ち、柔軟な考えのもとに緩和ケアに携わっていきたいと思います。お忙しい中、お世話になりました馬場婦長さんはじめスタッフの皆様に深く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 

 

 

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