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長期化した重症の患者さんを責任を持ってケアしていくことは、ナースにとっても負担になることが多くストレスも大きいとのことでした。しかし、そこではチームとして他のスタッフがfollowに入り、カンファレンスを持ったりしているということでした。困難な問題を持つ患者さんのケアには、そのチーム内での信頼関係や日頃のメンバー間のコミュニケーションが大事であると考えられます。よくバーンアウト(燃えつき症候群)という言葉を聞きますが、この予防のためにも日常のチームのあり方を大切にしていくことを教えられました。

また、病棟ではウォーキングカンファレンスが行われていました。その時の患者さんの病状の把握を行い、患者さんの思いや希望を聴き、その日の日程を決めていくということでした。複数の看護婦でアセスメントができるので多方面からの見方ができ、よい学習にもなるということでした。多くの患者さんがこのウォーキングカンファレンスを待っており、看護婦にいろいろなことを生き生きと話す患者さんの反応をみて、その意味を考えさせられました。もちろん、患者さん主体の生活を大事にすることから、患者さんの生活を話し合いで決めていくということもあると思いますが、看護婦が患者さんに「話」をしていただこうとする思いから、言語的コミュニケーション・非言語的コミュニケーションを使いながら患者さん自身の自己表現を助けているのです。私は、このことはコミュニケーションスキルの上達がなければうまくいかないことであり、自己表現できる患者さんはコミュニケーションの中で「癒し」を受けているのではないかと考えました。今までの私の患者さんへの対応は、病気・病状中心でのことが多く、患者さんの自己表現を大事にすること、その意味を考えることに欠けていたように思われます。患者さんへの理解や「癒し」を感じていただけるためにも、コミュニケーションスキルについて今後も学んでいこうと思います。

はじめに、ボランティアや遺族ケアについても学びたいという目的もありましたが、残念ながら行われていませんでした。確かにボランティア導入については、大きな問題をクリアし、継続・発展していくだけの力や教育を含めた環境を整えていかなくてはなりません。病棟では、ナースがその役割を担っていましたが、ボランティアの役割を担うことで視点の違った学びがあるということでした。私の病院でもボランティアが導入されましたが、今まではその役割や立場がよく浸透されず、導入当時からの人数が今ではその半数となっているという現実があります。私自身の考えとしては、ボランティアは施設の社会化、患者さんが医療者ではない人からの視点を持ち、支援を受けることができることで、市民、住民としての立場に戻れることや、地域への緩和ケアの理解を得ることにもなるのではないかと思うのですが、管理上の問題や地域性の問題等からボランティアの導入には時間がかかるところもあるように思いました。看護婦として、季節感の提供等できるところを行っていきたいと思います。

また、デスカンファレンスが行われていました。患者さんへのケアの振り返りができ、看護婦が心にあるものを表現したりして今後の課題に役立てていくということでした。一般には、患者さんの死はサマリーとしてまとめられて終わってしまうのですが、患者さんの「生」をどのように支えてきたのか、行ってきたケアはどうだったのかを客観的にとらえることは学習の機会になるのだと思います。この振り返り、患者さんからの学びを自分の病院へ帰ってから取り入れていきたいと考えました。

今回の実習の中で、受け持ち患者さんを持たせていただきました。肺がんの患者さんです。病名の告知を受けておられ、痛みと嘔気、嘔吐の症状コントロール中でした。とても明るく、温みのある女性で、娘さんと2人暮らしの方です。

緩和ケアは、まず症状のコントロールが行われなければなりません。症状は、患者が体験している主観的体験です。そこで看護婦はこの患者さんの訴えをありのままに受け入れ、共感し、症状のアセスメントを正確に行い、医師とコンタクトをとって苦痛をがまんさせないように対処していました。

 

 

 

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