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『がん終末期の「最後は家で過ごしたい」という気持ちに添うためにはじまったのが当院のホスピスケアである。

積極的な治療が望めなくなった患者から「家に帰りたい」と言われた時、がん専門病院で働く看護婦として「私にできることがあれば」と対応するのは自然なことであった。がん末期の在宅療養の中に、看護婦の専門的な目と手が入ることは、患者や家族にとっては力強い手助けである。しかし、どんなに家族が頑張っても、症状が悪化したり不安が増したり、最後まで自宅で過ごすことは非常に難しい。そんな患者と家族のために気がねなく入院できる病床がほしかった。病院のベッドではない、病院の中にある家庭が必要なのである。

看護婦が必要と判断してつくったホスピスであるから、ホスピスケアは看護婦がするのは当然のことである。家庭に医師はいない。看護婦もいない。家族が介護の中心であり、その家族を支えるのが看護婦の仕事である。けっして家族以上に医療者が前面に出ることはしない。それが私たちのホスピスである』

 

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図1 当院ホスピスケアのシステム

 

この成り立ちを聞き、看護婦の思いや姿勢が組織を作り、看護婦のひとりひとりがこのような思いでやっているのだということが感じられた。

このように看護婦が主体的な役割を担っているのでチームアプローチも看護婦がマネジメントをしており、医師との関係においても同じである。症状コントロールや生活援助をしていく上で患者さんの気持ちをとても大事にしているチームであり、自然にコミュニケーションスキルが使われている。

ナースステーションの中では何を話してもいい。例えば、患者さんの怒りを看護婦にぶつけられ、受けとめる努力をするが看護婦はとてもつらくなる。そんなときにナースステーションの中で、患者さんの気持ちを他のスタッフが共有してくれたり、看護婦自身の気持ちのつらさも共有してくれることでスタッフ自身が癒され、頑張れるんだということを体験し、理解することができた。このようなことはとても大切なことで、看護婦がバーンアウトしないで、頑張る姿勢につながるということがわかった。

 

 

 

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