日本財団 図書館


16.4.2 当局は、例外的な状況に該当するのでないかぎり、優先債権者のアイデンティティについて制限を課そうとするべきではない。守秘義務にかかわる諸問題を扱う適正な方法は、例えば、事業権契約(事業者に対して)及び直接契約(優先債権者に対して)において守秘義務条項を盛り込むことである(【25. 情報と守秘義務】【30. 直接契約】を参照のこと)。

 

16.4.3 しかしながら、資金提供者に対する何らかの移転制限が正当化される場合には、公共は客観的な基準(信用格付やEU/OECDの銀行であるなど)を設けるか、受け入れられる譲渡人のリストを指示するべきである。間違ってもぎこちない全てを網羅するような一般的な拒否権を確保しようとするべきではない。(どのみちうまくいかない可能性が高い)譲渡人のリストは適宜更新する必要がある。もし特別に注意を要する場合は、この手の制限条項を直接契約の中に盛り込むか、別途非公開の契約を結んで規定することも可能である。(【30. 直接契約】を参照のこと)。

 

16.4.4 契約譲渡またはサブパーティシペーションによって資金提供者の権利移転制限を回避することは可能であるため、このような制限条項は実質的に意味があるというよりは形式的なものであることが多い。それゆえにこのような取り決めを、当局の懸念の効果的な解決策として頼るべきではない。

 

16.4.5 プロジェクトが債券発行により資金調達されている場合、ある時点での債券所有者が誰かを知ることは極めて困難である可能性が高い。当局は、このような場合は特に優先債権者に制限を課すべきではなく、あてにするべきでもない(特に債券所有者が登録されていない持参人債券であるような場合には制限不能である)。債券が私募発行され、かつ移転制限が正当化される場合には、【16.4.3】と同様のアプローチが適用できるかもしれない。当局は、債券発行に関わる取引所規則によって、契約およびその他の関連書類の詳細を公表することが求められるかもしれないことに留意するべきである(このような規則には若干の例外(例えば、公表することが国家の安全保障にとって有害な場合)もある)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION