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17. 所有権の変更

 

17.1 はじめに

 

17.1.1 当局は、事業者の株主の変更をきらうことがある。特にこのような変更が事業者の所有権の変更をもたらし、特定の問題を引き起こす場合はそうである。このような場合、当局は、事業者の株主の株式移転に制限を課そうとすることもありうる。株主はたいていの場合、サービス提供開始日に以前の株式移転に対する制限を除き、このような制限に異議を唱えるだろう。一般的には、株式移転時の当局への通知義務以外の株式移転制限は必要とされるべきではない。

 

17.1.2 これは、以下に挙げる条文によって達成可能である。

(a) 事業者は、事業者の所有権の変更があった場合は、可及的速やかに、そしていかなる場合でも[30]日以内に、その旨を当局に通知するものとする1

 

17.2 当局の懸念事項

 

17.2.1 事業者の株主に権利移転制限を課す理由は、一つには当局がプロジェクトに関わること(または事業者の支配権を握ること)が好ましくないと判断する者の関与を防ぐためであり、また当初株主が引き続きプロジェクト利益の一端を担いつづけることで当局が安心感を得るためでもある。

 

17.2.2 一般的には、株主の変更が事業者に及ぼす影響についての問題点を解決するためには、当局は契約の他の条項を工夫するべきである。例えば、当初株主からのサポート無しに事業者が契約履行できるかという懸念については、サービス料の支払メカニズム及び契約中途解約権の中で解決するべきである。

 

17.2.3 当局は、当初株主が資本金を全額支払い終わる前にプロジェクトを離脱するのではないかという懸念から株式移転を制限しようとするかもしれない。しかし、このような追加出資義務が(例えば保証状により)完全に保全され、かつ移転先の株主から前株主同様のサポート条件(例えば前株主の技術サポートがあった場合は同様のサポートが提供されるなど)が得られる限りにおいて、少なくともサービス提供開始後には株式移転を禁止する理由は何もないはずである。但し、建設下請業者(またはその関連会社)である株主に対してサービス提供開始まで、また運営下請業者(またはその関連会社)である株主に対してサービス提供事業の運営が確立されるまで、株式の移転制限をすることは非合理的ではない。

 

1 所有権の変更とは、この目的の場合通常、直接的もしくは間接的な、法律上のもしくは受益権に関わる所有権の重大な変更と定義される。通常、事業者の発行済み株式の5%以上が直接的もしくは間接的に移動する場合は(通知義務上の)重大な変更として取り扱われる。但し、必ずしも常に5%が最も適切な数値というわけではない。

 

 

 

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