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16. 契約譲渡

 

16.1 はじめに

 

長期の契約期間の間には、当局・事業者或いは資金提供者のアイデンティティに変化が起きることがある。この可能性については契約交渉時に十分認識されるべきである。そして、適宜変更が可能な柔軟性を持ちながら、なおかつ当事者間でお互いのアイデンティティや信用力に十分な安心感がもてるような適度なバランスが取られる必要がある。

 

16.2 事業者に関わる制限

 

事業者が契約に基づく権利を譲渡(アサインメント)・代位(ノベーション)又は移転(トランスファー)することを契約上認めるべきではない。但し、優先債権者の担保権行使の一環として行なわれる場合は例外である。もし直接契約上の権利に基づいて優先債権者が代わりの事業者を任命する場合は(第30章直接契約参照)、もともとの事業者の権利と義務が移転されることを契約上認めるべきである。

 

16.3 当局に関わる制限

 

16.3.1 一般的に当局の契約上の権利と義務を譲渡または移転することは認められるべきではない。代位(ノベーション)の為には事業者の承認が必要となるため、事業者にとって問題となるのは譲渡(アサインメント)である。

 

16.3.2 上記に対する主たる例外は、移転が制定法にもとづいて行われる場合である。特定のプロジェクトまたは産業の場合は、その他に特別の例外規定を設ける必要がある場合もある(例えばNHSトラストや地方自治体による譲渡が予想される場合など)。特殊な例外は、特定プロジェクトもしくは特定部門ではそのための規定を設ける必要があるかもしれない(例えば、NHS信託もしくは地方自治体による譲渡が期待される場合である)。当局は、資金提供者にとっては移転後の当局のコベナンツや信用格付が、もともとの当局のものと同じくらい強力であることが非常に重要であると言うことを認識するべきである。もしそうではない場合は、適切な信用力強化の方法が事業者の立場を侵害しないために必要となろう。

 

16.3.3 中央政府機関の間では契約上の権利・義務は移転可能とするべきである(英国政府の義務が保持される場合)。

 

16.4 優先債権者に関わる制限

 

16.4.1 当局は、優先債権者の権利譲渡を制限したくなるかもしれない。その理由の一つには、案件の交渉過程を理解している当初からの優先債権者を関与させておきたいということがある。しかし、主たる理由は機密事項と国家の安全保障/公序良俗に関わる問題である。当局は、例えばプロジェクト情報がだれの手にあるのか、また最終的に自分はだれに代金を払っているのかにつき関心を抱くかもしれない。当局は、国家の安全に関わる諸問題に巻き込まれたいとは思わないものである。

 

 

 

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