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5. 遅延

 

5.1 はじめに

 

5.1.1. 事業者は、サービス提供開始が、通常はある定められた日9までに確実になされ、プロジェクトの存続期間中、サービスが確実に提供され続けるように責任を負う。しかしながら、事業者がサービス提供の開始もしくはサービスの提供を成就させなかったことによる支払い責任から公正に解放されるべきであるような事情もあるかもしれない。事業者にリスク管理を奨励することと、当局を事業者の不履行から保護することのバランスを取らなくてはならない。

 

5.1.2 何らかの免責が適切と考えられる遅延についての条項は、以下のとおり3種類に分類されるべきである。

・ 補償事由−例えば当局のリスクであることが明確な事由で、これに関して事業者が補償されるべきである事由(【5.2 補償事由】を参照のこと)。

・ 免責事由−契約期間中のあらゆる段階で発生し事業者によって最も適切に管理される事由(必ずしもそのコントロール能力を有しているとは限らないが)、及び事業者が資金調達リスク負う事由だが、それに関して如何なる解約事由も発生しないような事由(【5.3 免責事由に起因する遅延】を参照のこと)。

・ 不可抗力事由−契約期間中に発生する何れの当事者の責にも属さない(【20.3 不可抗力による解約】を参照のこと)。

 

5.1.3 (少なくとも、建設段階における)補償事由と免責事由との区別は時々、事業者に与えられるのが‘時間と金’か、‘時間’のみかの違いとして表現されることがある。不可抗力は異なる遅延事由のカテゴリーであり、その他の解約に関連した事由と並んで処理されるものである。(【20.3 不可抗力による解約】を参照のこと)

 

5.1.4 ある特定の事由は、プロジェクトの性質、事由が発生する可能性、および事業者がかかる事由が起きるリスクを価格の中に含める場合に達成可能なVFMによって左右されるため、プロジェクトが異なれば、取り扱いも異なるかもしれない。リスクを補償事由に追加することの当局への影響を考えると、特定のケースにおける注意深い配慮をすべきである。例えば、建設段階での遅れはハイリスクであるという方法を以前政府が用いたプロジェクトにおいて、当局はそのように高リスクを導いた事由は補償事由とするべきである。そのようなリスクの存在しないプロジェクトにおいて当事者は免責事由がそうしたリスクを取り扱う方法であることに同意するであろう。建設段階で化石もしくは遺跡が発見されるリスクを取り扱うもう一つの方法は、補償事由と免責事由のちょうど間にある方法であり、事業者があらかじめ取り決めた初期の損失(資金及び建設計画からの遅れ)レベルを事業者が負担することである。契約で規定するようにそのレベルを超える更なる損失は合意の算式で当事者に割り振られる。10

 

9 典型的なストラクチャーでは予定された建設完工日(予定サービス開始日)まで或いは契約日或いは発効日(過去に発生した問題の現状によって)までにサービス開始を確認することを事業者に求める。但し、事前に合意した最終日以前である。(【4.5 最終期限】を参照のこと)

10 この方法は様々なプロジェクトに適用可能である。しかし、化石もしくは遺跡が発見されるリスクを取り扱うときに一般的に用いられるべきでその他のリスクに用いられるべきではない。異なる方法が正当化される理由は下記のとおりである。

(a) そうしたリスクで潜在的なインパクトがより大きなものは他の可能な化石免責事由のケース及び

(b) 化石もしくは遺跡の発見に起因する公共の利益

 

 

 

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