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4.2.1 サービス提供の遅れを理由とする約定された損害賠償金は、事業者がサービス提供を予定通り開始するという義務を完遂しなかった場合に当局がこうむる損失もしくは損害賠償額の、事前の予想金額である。当局がサービス料の支払い(サービス提供を獲得する経費自体も考慮に入れる)を超える損失を被らないなら、損害賠償金は適正ではない。当局がかかる損失をこうむるなら、損害賠償金は適正かもしれないが、それはかかる損害賠償額を要求することによって当局、事業者もしくはその融資者が必要とする種々の保護の影響を考慮したうえでも当局がVFMを得られる場合である。

 

4.2.2 資金調達計画は、決められたサービス提供開始日よりサービス料が支払われることを前提としているので、サービス提供の遅延による影響を回避するためにシニア・レンダーは通常、下請業者に対して遅延が生じた期間、事業者に支払われる損害賠償金(シニア・レンダーに保証されている)を元利償還金に当てるべく要求する。当該下請業者は、この必要条件を価格に上乗せして事業者に請求するだろう(たとえば、かならず予定通りに完成するように、その建設費を増額する)し、みずからが可能性のある時間をより多く与えら得るために、長い建設期間を要求することもあるだろう。その時、この費用は一括請求支払いを通じて、当局にそのまま引き渡される可能性が高く、プロジェクト予定表はより長期になる可能性が高い。当局が、上位貸し主によってすでに要求されている損害賠償額に加えて、みずからにも事業者から損害賠償額が支払われることを望む場合、これは一括請求をさらに増額し、建設期間をさらに長期化させる可能性が高い。したがって、当局への損害賠償額は金銭的に不十分な価値であることが判明するだろう。ただし、4.2.3で概説されている状況であれば、このかぎりではない。

 

4.2.3 当局が遅延の結果として負担する経費がきわめて巨額であり、それゆえ損害賠償金によって押し上げられ、増大した出費(たとえば、一括請求の高額化)が正当化されるような状況であれば、約定された損害賠償もVFMを有することが判明するかもしれない。これは、きわめて重要な意味を持つ日(【3.3 きわめて重要な意味を持つ日】を参照のこと)があり、これに関連して当局の、かかる日に対処するための予備費計画は、相当額の出費が発生するだろう。3損害賠償金はまた、以下の場合にも正当化されるかもしれない。

・ 当局がVFMのあり、プロジェクトに供出しなければ、サービス提供開始前の期間中は当局が利用できる資産をプロジェクトに供出し、それゆえ“機会費用”が負担された場合

・ 下請業者によって支払われた、損害賠償金について、先行する請求(たとえばシニア・レンダーに対する支払い)がなく、損害賠償金が、VFMを与えられる場合

 

3 たとえば、学校プロジェクトの場合、当局は使用できない学校施設に代わるものとして臨時の教室を購入しなくてはいけないかもしれない。刑務所のプロジェクトの場合、刑務所が予定通りに準備が整わないので、警察の拘置所に収容するために支払いをしなくてはならないかもしれない。フライト・シミュレータに関わる訓練プロジェクトの場合、フライト・シミュレータにもとづく訓練が予定通りに利用できなければ、当局は代替的手段によって訓練を施す経費を負担しなくてはならないかもしれない。

 

 

 

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