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(5)財源に関する政策

ア 一般財源(PSO=Public Service Obligation)

公共交通の整備は、自動車からの転換を促すには、不可欠である。図表12、13にも示すように、ドイツ、オランダでは、公共交通機関の建設・運営に多くの補助が出されているが、その財源の一部として、一般財源が投入されている。その根拠として、学生・身障者等への文教・厚生目的補助があり、これは、公共サービス義務(PSO=Public Service Obligation)の1つと解釈されている。我が国においては、私的財的な採算問題に議論が終始しがちであり、こうしたシビルミニマムとしての公共サービス義務の意識が希薄であるという、いまだ発展途上国的な感覚のままである。交通を私的選択に任せると交通渋滞、局地公害、温暖化ガスの排出増加といった公共に重大な損失が及ぼされるとともに、交通弱者の選択の自由を奪うことになる。こうした配慮も併せて、公共交通の充実を訴える必要がある。

 

図表3-12 運営収支の比較

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図表3-13 鉄道建設構成の比較

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イ 交通特定財源(中心市街地再活性化予算:燃料税等)

ドイツの中心市街地においては、1960年代後半に道路混雑が激しくなり、買物客が集まらなくなった結果、衰退の一途をたどった。そのため、時の交通大臣レーバーは、燃料税の一種である鉱油税(ガソリン税よりも広い範囲の燃料一般に課税)を増徴し、増徴分を中心市街地の地域公共交通整備事業に使えるようにした。これにより、ドイツ各都市では、環状道路(多くは、かつての城壁を壊して造った)の内部を、地下化した路面電車(Uバーン)とバスのみが入れるトランジットモール化し、中心市街地の再活性化を図ることに成功した。これと同時に、温暖化防止の観点からは、都心部に集まる交通を、郊外でSバーン(郊外電車)やUバーンに乗り換えさせて導入することにより、温暖化ガスの排出を減少させていると考えられる。

 

(6)まとめ

ア 複合効果の期待できる施策

今日、わが国の自治体が採りうる土地利用・交通のグリーン化手段には多くのメニューが考えられるが、資金の掛からない、しかもインセンティブ効果の期待できる手段を併用し、相乗的な効果を生み出す仕掛けを作らない限り、温暖化ガスの排出目標を達成することは極めて困難であると言えよう。

 

 

 

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