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さらに、今後は非接触カードの普及も予想され、銀行口座からの自動引き落としも可能となる。そこで、これらのシステムを活用して、1)運賃体系を、ピーク時間帯に高く、閑散時間帯に安く、差別化して設定し直す、2)会社単位に鉄道・バス会社と契約し、事後的に一括引き落としの方式で運賃を支払う方式を設定することにより、社員が閑散時間帯に利用するほど会社の通勤費支出が縮減されるようにする、ことが考えられる。さらに、3)従来、公共側からの訴えに過ぎず、効果のほとんど期待できなかった時差・裁量時間勤務制の推進インセンティブを与えることも可能となる。

 

エ 路面電車の郊外鉄道への乗り入れ(主に20〜100万人都市)

大都市における、郊外電車の都心の地下鉄への相互乗り入れは、我が国が他国に先駆けて実施した公共交通のシームレス化であるが、大都市圏郊外や地方の中核都市、中規模都市では、実施されていない。近年のヨーロッパにおける成功例の代表が、ドイツ・カールスルーエ市の路面電車とその周辺地域にネットワークを張るDB(ドイツ鉄道)のローカル線との間の相互直通運転である。カールスルーエは、人口約30万人の南ドイツの中規模都市であるが、その都心部の商業地区の目抜き通り約2?区間をトランジットモール化すると共に、これをDBの幹線に接続し、さらに郊外でDBローカル線へと入っていく直通運行を、都心部から50〜60?に達する地域(バーデンバーデン等)まで実施している。この圏域内の人口は、合わせて約95万人程度である。このローカル線は、大変な赤字路線であったが、直通運転実施後は、各駅に設置された無料のP&R駐車場まで自家用車で出て電車に乗り換え、都心部の職場あるいは商店へと向かう人々が急増し、乗客数にして、従前の5倍以上に増加した。ここでの技術的な問題は、路面電車区間の直流750Vから、DB区間の交流15,000Vへの変換であったが、変換器を装備してスムーズに移行するシステムをとっている。

カールスルーエ市は公共交通整備の条件として、速達性、快適性、利用可能性(Availability)を掲げている。この成功は、ヨーロッパ、アメリカのいくつかの都市に影響を与えつつある。わが国においても、類似の状況にある地域はいくつもあると考えられる。

 

オ 自転車中心の街づくり

オランダでは、土地が平らなこともあって、20年以上にわたって自転車利用中心の街づくりが各地で進められている。人口約9万5千人のデルレフトでは、Bicycle Action Planを作成し、デルフト中央駅駅前広場の中央にはかつての自動車に取って代わって駐輪場が陣取っている。その結果、現在では、自転車の交通分担率が50%にもなっている。また、都心部へはバス以外の自動車通過交通を排除するため、バスにのみ反応し下りる可動式障害物を設けていて、バスも20〜30?/h程度の極めて低速度で走行している。

我が国においては、近年、自転車による鉄道駅へのアクセスがポピュラーになってきているが、駅が自転車から鉄道に乗り換えやすく設計されている例は、未だ非常に少ない。自転車利用は、もとよりCO2、排出量最小解の1つであり、市民のせっかくの性向変化をうまく捉える抜本的な自転車優遇策を講じることによる効果は大きいものと期待される。

 

 

 

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