日本財団 図書館


こうした意味からは、巨額の資金投入が必要な鉄道等の整備だけに頼らず、たとえば、中立ながらも税制を改正し、自動車利用者の意識向上、自動車メーカーの高効率エンジン開発促進の両面から複合的な温暖化ガス削減効果が現れるような施策の実施が不可欠である。

そのためには、各自治体は、従来の慣習を超えた思い切った施策を打ち出すとともに、市民を巻き込んでの議論を引き起こし、意識を高めつつ市民を味方に引き入れることが必要である。今日において、後ろ向きの政策によって市民を敵に回すようでは、目標の達成はおぼつかない。

 

イ すべての計画のパッケージ化

本稿で述べてきたことからも分かるように、どんな計画でも、関連する計画とパッケージで考えておくことが必要である。英国バーミンガム市では、90年代のはじめ、何年か続けて提案した個別交通プロジェクトヘの中央政府からの補助金が採択されない事態が続いた。そこで同市は、個別プロジェクト毎に与えられる矛盾を指摘し、プロジェクト間のアメとムチ、Push&Pullが政策間でどのように作用し合うかをあらかじめ検討した交通計画のパッケージにこそ、補助金を与えるべきであることを訴えた。こうして、メイジャー政権期に交通省から自治体へ支出される補助金の基準が、個別プログラム審査からパッケージプログラム審査に切り替わった。これにより、正反対の効果をもたらすプログラム・プロジェクトヘの同時補助という無駄が無くなった。我が国でも、全国自治体に、土地利用交通計画パッケージ化運動の起こることを期待する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION