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[10] へき地における生活習慣病の現状と対策

―肥満・インスリン抵抗性からのアプローチ―

 

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I. はじめに

都市部のみならず、へき地においても食生活の欧米化に伴い、糖尿病をはじめとする生活習慣病が急増しており(糖尿病690万人、予備群も含めると1370万人)、その対策が急務とされている1.2)。第20日本肥満学会(1999年)では「東京宣言」が発せられ、生活習慣病の上流に位置する肥満の重要性と肥満解消が生活習慣病撲滅への近道であることが示された3)。一方、脂肪細胞は、TNFα(インスリン抵抗性)、アンジオテンシノーゲン(血圧調節)、アポプロテインE(脂質運搬)などを分泌し、肥満に伴う病態を修飾することが明らかにされている。肥満は遺伝と環境の相互作用を受けるが、双生児のコホート研究により遺伝の関与の割合は約3割とされる。近年の分子生物学の進歩により肥満発症メカニズムも分子レベルで明らかにされてきた。1995年、米国アリゾナ州に居住し、成人人口の約5割に肥満と糖尿病を有するピマインディアンにおいて、熱産生と脂肪分解に関わるβ3-アドレナリン受容体のミスセンス変異(Trp64Arg)が発見され、肥満・熱産生機構の異常・シンドロームXの特徴(腹部肥満、高血糖、インスリン抵抗性、血圧上昇)・加齢に伴う体重増加、さらには糖尿病早期発症と関連すると報告され、世界的な注目を集めた4-6)。しかしながら、へき地における生活習慣病の現状とその遺伝的背景(β3-アドレナリン受容体のミスセンス変異など)についての報告はない。そこで、へき地における生活習慣病やシンドロームXの実態とその遺伝的背景について把握する為に本研究を立案した。

 

II. 対象と方法

京都府下A地区の健康診断を受診した1261名(平均年齢48±8歳、平均BMI22.4±2.6kg/m2)と肥満外来を受診した肥満患者217名を対象とした。健康診断受診者の身長、体重、血圧を測定し、胸部X線における肺野異常、上部消化管透視異常、尿所見異常、肝機能障害、高脂血症、高尿酸血症、耐糖能異常、貧血症の有無などを徳永の方法7)に従い、疾病点数としてポイント化した。

 

 

 

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