[4] プライマリケアにおける医療の質の保証に関わる検討
―患者さんの薬剤理解度向上について―
濱崎圭三 自治医科大学地域医療学
梶井英治 自治医科大学地域医療学
岡山雅信 自治医科大学地域医療学
佐々木将人 明浜町狩江診療所
永井康徳 明浜町俵津診療所
井上和男 十和村診療所
吉村学 久瀬村診療所
井上陽介 春日村診療所
I. はじめに
へき地診療所においては高齢慢性疾患患者が多数を占め複数薬剤の服用者が多い。しかし個々の薬剤についての十分な理解がなされていないため服薬を自己調整している高齢者も少なくない。薬剤師が患者さんへの服薬指導を十分に行い、患者さんの薬剤理解度を上げることが理想ではあるが、薬剤師が勤務している診療所は皆無に等しい。診療所医師が忙しい診療中に行うか看護婦や事務職員が薬袋を手渡す時に説明している例も多いと思われる。医療保険で薬剤情報提供料が認められるようになり、薬のしおりを薬袋に同封したりと文書での情報提供はかなり行われてきている。しかし薬剤情報提供により服薬習慣の改善が認められる研究はあるが、患者の薬剤に対する理解度について調査している研究はほとんどない。薬剤に対する理解度が低い患者さんは服薬コンプライアンスが悪いと考え、薬剤情報伝達手段の違いによる理解度と服薬コンプライアンスの変化を探り、より有効な服薬指導法を提言する目的でこの研究を行った。
II. 方法
A. 実態調査
へき地診療所における服薬指導の実情を探るため、へき地診療所が数多くを占める全国国保診療所勤務医師(診療所長)に対し郵送による自記式アンケート調査を実施した。国保直診年鑑1998年版で診療所924ヶ所をリストアップし、そのうち兼任ないしは診療所長名の記載がないもの及び歯科単独の診療所を差し引いた675ヶ所にアンケート依頼文書を郵送した。1ヶ月後返事がないものは再度依頼文を郵送した。