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要援護高齢者の層別解析では、デイサービス、デイケア、訪問看護サービス、福祉用具の利用、在宅介護支援センターが有意に百石町で利用率が高かった(P=0.00)。ただ、移送サービスについてはA村で利用が多く、百石町では移送サービスは利用されていない。これは、A村は交通の便が悪く、最寄の病院までは20分から60分車でかかり、百石町では町立病院までは15分以内に自家用車でも移動可能な環境にあるなど地理的な要因によるものである。百石町では、デイサービスの利用者が多く(60%)、情報の提供の主体を担う在宅介護支援センターがよく利用されている(35%)ことがわかる。

周知度については、一般高齢者の周知度は全体的にA村の方が高い。一方要援護者に限ってみると、ほとんどのサービスについて有意に百石町で周知度が高くなっている。これは、高齢者全体の周知度を上げることが必ずしも、サービスが必要な方の周知度の向上につながっていないこと、情報提供の仕方がサービスをより必要な対象者に届きにくい形式でなされていることを推察できるものである。百石町で逆に要援護者の周知度が一般住民と同程度あるいはそれ以上に高い理由はサービスを受けることで様援護者が学んでいったことが推察される。また、情報提供の場として、在宅介護支援センターがうまく活用されていたことも一因としてあげられる。一方、A村で一般高齢者の周知度が高いのは、サービス提供体制が不充分な環境にあり、住民あるいは行政サイドの意識の高まりのためなのかもしれない。

利用意向については、ほとんど全ての項目について、A村で「今後利用したい」という利用意向率が高い。1つには百石町の調査結果では、「わからない」に回答したものが多かったことがあげられる。他の要因としては、施設整備、サービスの供給がない中でサービスを望む声の現われである可能性が高い。一方整備がある程度行き届いた百石町では、現実的に、近い将来自分に必要かどうかの判断が下されている可能性がある。サービスに対する評価としては、「利用している」ものよりも「今後利用したい」ものの割合が高いことから、現行のサービスの評価は概ね高く、比較的現実的な判断のもとで潜在するニーズがまだあることが予想される。

ただし、この調査で明らかなように要援護者、一般高齢者ともに介護保険を中心とした介護サービスについての周知度は低く、ほとんどが30%から50%以上のものが「知らない」と答えるなかで、サービスメニュー提示型のニーズ調査は限界があることが分かる。さらに、高齢者にインタビューを行うなかで、高齢者が安心して生活するためには、介護保険サービスでは見えてこない要因がかなり大きく影響していることが推察されてきた。

 

介護認定審査済みの要援護者について、在宅ケアの利用の有無との関係について解析した(表4)。名義尺度はχ2検定、要介護度、寝たきり度などは順序尺度としてMann-Whiteney検定を行った。結局、要介護度とは必ずしも在宅ケアの利用の有無な関連はなかった。寝たきり度は関連する傾向(p=0.062)にあったが、痴呆の度合いは関連は示唆されなかった。また、介護者の要援護者に対する続柄(p=0.969)も関連はなかった。関連があったのは、世帯構成(高齢者以外と同居、老人世帯、独居世帯)、世帯人数、年齢の違いにより、在宅ケア利用の構成が異なり(p<0.05)、独居者は在宅ケアの利用率が低く、世帯人数が少なければ少ないほど、つまり独居か二人暮らしであるとサービス利用の率が低かった。また、年齢が低い方ほどサービスをより利用する割合が高い結果となった。さらに、ホームヘルプサービス、デイサービスについて層別して同様の解析をしたところ、同じ結果がえられた。これは、後の住民調査、インタビューからの考察であるが、独居高齢者、老夫婦世帯は精神的自立性が高く、家庭での役割を持っていることがその要因と推察される。

 

 

 

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