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第7章

長崎港における効率的な輸送体系上の実現に向けた提言

 

ここでは、本調査研究のまとめとして、長崎港を中心とした効率的な輸送体系のあり方、その実現に向けて求められる方策、実現に向けた課題等を、各関係者に向けた提言として取りまとめる。

 

1. 長崎港における国際航路網充実の意義

本調査では、長崎港をケーススタディとして取り上げ、九州西部経済圏における効率的な輸出入コンテナ貨物の輸送体系のあり方を検討した。

長崎港において、国際航路網を中心とするコンテナ輸送体系を充実させる意義として、以下の3点をあげることができる。

 

(1) 荷主の輸送コスト削減を中心とした国際物流の効率化

今回長崎県・佐賀県の荷主企業を対象に実施したアンケート調査の結果によると、回答のあった87社のうち17社(19.5%)が「ぜひ長崎港を新規に利用したい(利用を拡大したい)」、34社(39.1%)が「長崎港の新規利用(利用拡大)について検討してもよい」)と回答しており、特に長崎県内企業では63社中47社が長崎港を利用したいとしている。これは、韓国航路の開設により、これまでの韓国だけでなく、釜山港でのトランシップにより東南アジア、欧米等との輸出入が長崎港で行えるようになったことが寄与しているものと考えられる。

長崎港利用の条件については、利用意向のある企業のうち9割弱が「現状と比較して輸送コストが削減されること」を条件とし、特に2割強は「大幅に輸送コストが削減される」必要があるとしていることから、輸送コストが荷主の利用港湾選択時の最大の関心事であると考えられる。

同じくアンケート調査結果によれば、長崎市を中心とする長崎港周辺の企業が長崎港を利用してコンテナ貨物を輸出入する場合、他の港湾を利用する場合と比較して海上運賃は2〜3万円高くなるものの国内輸送コストは5〜7万円安く、トータルコストが削減できるという結果が得られた。また、近隣港湾の利用により、港湾までの所要時間短縮などの効果も期待できる。

このように、長崎港において国際航路網を中心とする輸送体系を充実させ、長崎港周辺の荷主企業の利用を促進することにより、輸送コスト削減を中心とした効率化を図ることが可能となり、地域の産業立地競争力の強化や国際経済交流の活発化に寄与するものと考えられる。

 

(2) 地域づくりの核としての国際航路

長崎は江戸時代より戦前に至るまで海外との交易によって発展してきた都市であり、現在もその歴史資源を中心とした観光、造船業、水産業などの主要産業はいずれも「港」に関係している。長崎港の国際航路網は、このような都市のアイデンティティを象徴するものであるとともに、中国をはじめとする海外との交流を通じて今後地域の産業活性化を図ろうとする際に、長崎と海外を結ぶパイプ役として活用しうるものである。

 

(3) わが国の西のゲートウェイとしての期待

長崎港は日本の西端に位置するため、国内輸送においては利便性が低いものの、上海に最も近いなど、中国を中心とするアジアとの国際輸送においては地理的な優位性を有している。このため、今後国際経済交流のさらなる活発化が予想される中で、わが国の西のゲートウェイとして、長崎港周辺のみならず全国各地からみた国際輸送における結節点としての発展可能性を秘めている。

 

 

 

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