日本財団 図書館


図表III-3-1 政策シナリオ

271-1.gif

 

図表III-3-1に示した各ケースの計算結果について、各港湾の取扱貨物量の変化を図表III-3-2および図表III-3-3に示す。

図から解るように、PRESENT〜CASE-2を比較すると、阪神港の港湾諸費用のみの低下は阪神港の貨物量を増大させる結果となり、最も近接する名古屋港がそのシェアを失い、京浜港と釜山港のトランシップ貨物が若干阪神に奪われる。次いで、阪神港の荷役料のみを下げると、港湾費用のみの低下より、より大きな影響を及ぼし、名古屋港、関門港はその国内シェアを減少させ、さらに京浜港、釜山港は大きくトランシップ貨物を阪神港に奪われるだけでなく、他港から阪神港へのトランシップが増大する。しかし、香港・シンガポール港は影響を受けない。このことは、先ず、国内の港湾でその背後圏の奪い合いが熾烈となり、次いで、トランシップ貨物の奪い合いが近接する港湾で発生し、さらに、近接外国港湾から阪神港へ現在よりさらに多くのトランシップ貨物が増えることを意味している。

一方、CASE-3をみると、その影響はCASE-2とほとんど変わらない。このことは、料金の引き下げは、荷役料がより大きな影響を持つことを意味している。CASE-4〜CASE-5は、阪神港と京浜港で同時に料金を下げた場合の同様の影響をみたものである。この場合、京浜港はあまり影響を受けず、関門港、名古屋港が背後圏を奪われ、釜山港はトランシップを阪神港に奪われる。また、同時に、近隣諸国他港からの阪神港へのトランシップ貨物も増大する。

トランシップ比率の変化を少し詳細に検討しよう。図表III-3-4は図表III-3-2からトランシップ比率のみを抜き出して整理したものである。実線は国内港湾、破線は外国港湾である。この図より、阪神港の港湾費用の変化は、自港のトランシップ貨物は釜山港より奪う以上に増える結果となる。これは、先に述べたように、上海港からのトランシップが現状より増えることを意味している。また、阪神港の荷役料金の値下げは、京浜港のトランシップ貨物を大きく奪い、釜山港には京浜港ほどの大きな影響を与えない。一方、阪神港と同時に京浜港が同じ政策を採った場合、京浜港のトランシップ貨物をそれほど減らさずに、阪神港は釜山港と競争できるだけでなく、上海港から大きくトランシップ貨物を増やすことになる。また、注目すべきは、日本の港湾政策が、遠くシンガポールのトランシップ比率を高める遠因となることである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION