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第3章

港湾運営政策のネットワーク均衡への影響

 

1. 概 説

 

第2章で示したように、本研究で開発したモデルは、荷主、船社の動きをかなりの精度で予測することができることが解った。そこで、本節では、本モデルを適用し、港湾政策がコンテナ定期輸送ネットワークにどのような影響を及ぼすかを検討する。

阪神・淡路大震災以後、日本の港湾における、港湾諸費用や荷役料が諸外国に比較して高く、このことが原因で、潜在的ポテンシャルに関わらず船社の寄港便が少ない、荷主に高い輸送コストを強いる結果となっている指摘が相次いだ。また、オーバーパナマックスと言われる超大型船が基幹航路に投入されるような趨勢下では、これらの船舶が寄港できる港湾施設が未整備なわが国の港湾は、いずれ、フィーダーサービス便のみが就航する港湾になり果てるであろう、といった予測が囁かれている。これらのことは、定性的にある程度予測しうることがらであるが、実際、どこにどのような影響がでるか定量的予測は困難と考えられていた。本節では、このような議論について、モデルにより定量的に分析を行う。

 

2. 港湾利用料変化の影響

 

(1) 港湾取扱貨物量と寄港便への影響

ここでは、日本の主要港湾の利用料および荷役料を変化させた場合の影響をモデルによって検討してみる。先に述べたように、港湾施設の整備には長期の時間が必要で、整備の結果出現するフローはフロー均衡と呼んだ。しかし、港湾利用料や荷役料の変更は随時実行することができ、船社、荷主はこれに短期間に反応し、その結果新しいフロー均衡が生まれる。ここでは、図表III-2-7に示した港湾利用料および荷役料を、阪神港、京浜港について変化させた場合の影響を検討する。この検討の目的は、国内主要港湾の料率が変化することにより国内の港湾間およびアジア主要港湾間でどのような競争が発生するか、を見るためである。そのために、日本の港湾ともっとも地理的に競合性の高い釜山港を基準に図表III-3-1に示したシナリオで分析を行った。以下の結果は、この表に示したケースと対応する。

 

 

 

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