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このことは、図表III-3-5に示した航路別就航隻数を見れば理解できる。すなわち、阪神港では、便数が各航路とも大幅に増大し、船社の利便性が拡大していることが解る。また、京浜港、関門港での欧州直行便の減少は、阪神港へのシフトとシンガポールでの日本貨物の欧州航路トランシップの増大がうかがわれる。なぜならば、シンガポールでは、欧州航路の便数は他港と比較して影響を受けず、その地位を保っているにも関わらず、他港では欧州便を減便しているからである。

 

(2) 船社の利潤変化

以上の船社による行動パターンの変化の理由は、船社の利潤変化として見ればより明確になる。図表III-3-6に各ケースに対応する船社の利潤変化の様子を示す。この図から解るように、阪神港、京浜港の港湾料金の低下および荷役料金の低下は、船社の利潤拡大につながり、特に、荷役料金の低減が大きな利潤をもたらす。このことから、船社にとって、阪神港、京浜港の荷役料率の低減は、極めてメリットが大きく、現状より約1.2倍の収入増となる。この結果、多くの便数をこれらの港湾に振り向け、結果として、港湾取扱貨物量の拡大をもたらす。このことは、港湾を管理する主体にとっても、地域経済に好影響を及ぼすことになる。

 

(3) 国内荷主への影響

(2)では船社の利潤拡大につながる結果を述べたが、これらの港湾運営政策は国内荷主にとってどのような結果を及ぼすであろうか? ここでは、荷主への影響を考察する。 

図表III-3-7は国内荷主の海上運賃、港湾アクセス・イグレス費用、海上金利、船待ち金利のそれぞれの変化を示した図である。また、図表III-3-8〜III-3-14は国内ゾーン別荷主の輸送費変化を示したものである。この図表から解るように、各ケースとも国内荷主全体への費用は若干増加する。しかし、船社の利潤増加額と比較すれば、荷主の費用増加は極めて少ないことが理解される。ただし、荷主費用の増加は当然、すべての府県ではなく、阪神港のみ料金を低減させた場合は阪神港の背後圏では、荷主の費用が低下し、名古屋港、関門港の背後圏の荷主費用は増加する。同じことが、京浜港の料金低減の場合も言える。

以上の結果を総合的に考えると、港湾料率の変化に対して船社は極めて敏感に反応し、利潤拡大の立場から、大規模で集積メリットのある安価な港湾を選択することが解るので、国際港湾間競争に打ち勝つためには、大規模港湾での料金政策が極めて重要である。阪神港、京浜港については、その港湾料率と荷役料率の低減は、船社のこれら港湾への配便増加を促し、外国近隣港湾からのトランシップ貨物を増大させる結果となる。同時に、国内港湾との背後圏シェアの争奪をめぐる競争が激化される。

 

 

 

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