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6. 結語

 

香港港は港湾内に4つの民間コンテナ・ターミナル・オペレーターが存在するため、これらターミナル・オペレーター間で熾烈な競争が行われている。このことが香港港のコンテナ貨物取扱効率を高めている一因である。しかし近年、中国国内の新興コンテナ港湾が急速に台頭してきており、集荷圏を中国本土に大きく依存するようになりつつある香港港にとっては大きな脅威となっている。

香港港は地場貨物の比率が低く、周辺地域、とりわけ中国との間のトランシップ貨物の取扱いに大きく依存している。また香港は都市「国家」という側面が強い。したがって香港港は中国国内のコンテナ貨物の集荷において他の中国諸港湾に対して強い競争力を持たなければ港湾機能の集積度を低下させ、香港の独自性を喪失させかねない。したがって港湾機能配置政策は、実質上対外進出という形をとる。香港の場合、港湾経営はシンガポールのように一元化していないため、表面上、民間コンテナ・ターミナル・オペレーターと特別行政区政府のそれぞれで対外拡張戦略が展開されている。まず民間コンテナ・ターミナル・オペレーターはシンガポールのPSACに先んじて多国籍港湾ターミナル化を進めており、それによってコンテナ貨物需要が急激に増大しつつある中国市場へ新規参入するライバルの成長の芽をあらかじめ摘む戦略をとるとともに、グローバル・アライアンスに対応したコンテナ・ターミナル・サービス・ネットワークの構築を進めている。そして香港を中心とした航路ネットワークの構築を、コンテナ・ターミナル・オペレーターの側から船社に提案していくことが可能となる。これはとりわけグローバル・アライアンス時代に対応したターミナル経営の1つの方向として注目される。一方、特別行政区政府は水陸両方でコンテナ貨物の香港ネットワークを中国国内に作ることによって香港を拠点としたコンテナ貨物流動システムを構築しようとしている。

香港の場合、もともとターミナルの整備・管理・運営は全て民間企業が行っているため、民営化という方向は見受けられない。逆に香港港にコンテナ貨物が集まるシステムの構築を香港特別行政区政府が、民間大港湾・海運企業のニーズを汲み取って、政策として展開している。香港の場合、いわば民営化と逆行する官民融合体制を形成しつつある。その背景には上記の中国国内における港湾間競争の激化や香港の民間コンテナ・ターミナル・オペレーターの多国籍港湾ターミナル化がある。

香港港やシンガポール港大港湾と言えども競争にさらされている。その競争には2つのタイプがある。1つは大港湾間の競争であり、もう1つはアジア全域での後発地方港の挑戦である。

前者については基本的に東アジア域内におけるハブ・ポート化を目指した競争であるが、ハブ・ポートの地位を維持するあるいは目指す背景にはさまざまな各港独特の特殊事情がある。

 

 

 

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