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たとえばシンガポールや香港はもともと都市国家であり、その港湾は地元貨物に対する依存度が低い、言い換えるならば、他国貨物の集荷に大きく依存している。したがってハブ・ポート機能=国際貨物の積替機能を持つことは当該港湾にとって死活問題となる。また台湾の場合は、前述したように「国」としての存立基盤の重要な要素の1つが経済交流の拠点化であることから、高雄港のハブ・ポート化はやはり「国」としての死活問題に直結している。

後者については、東アジア全域で見られる大荷主主導型物流=利用港湾の地元港湾化という現象の中で集荷圏が細分化しつつある。東アジアの先発主要コンテナ港は地方港の台頭に対して適切に対応していかなければその集荷圏を縮小させ続けなければならなくなる。集荷圏の縮小を回避する方法が港湾への簡便なアクセス・ルートの構築であり、当該主要港を中心とするフィーダー・ネットワークの構築である。すなわち、アクセス・ルートの構築による距離的劣位の解消か、あるいは細分化されてきた集荷圏をたばねるフィーダー・ネットワークの頂点に位置するハブ・ポートになるかの、少なくともどちらかを選択しなければならないのである。

特に香港港には1国2制度を北京政府に遵守させる前提条件としての香港の独自性の確保がある。北京政府が1国2制度を是認する理由の1つは香港経済の成長の極としての独自の機能である。したがって香港側が1国2制度を確保しようとするならば、香港側は香港が持つ経済交流機能の集積度の高さを維持・発展させなければならない。この点は香港型の「官民融合」体制によって繁栄を享受してきた香港の「官」側も「民」側も利害が一致するところである。一見、無制限の経済的自由が存在するように見える香港経済および香港港管理であるが、PMBの存在とその役割に代表されるように、民間コンテナ・ターミナル・オペレーターの成長・生き残り戦略と都市経済香港の地域経営がリンクする形で秩序を持っている。そして「官民融合」体制の下で香港特別行政区政府は具体的かつ一貫した政策を展開しているのである。

 

《参考文献》

Bascombe, A., (1998) "Battle stations" in Containerisation International, May.

HongKong's Marine Department, (1998) The Port of Hong Kong-Yearbook & Directory 1998/1999.

Port Development Board HongKong, (1998) Hong Kong Port Cargo Forecasts 1997/1998.

Woodbridge,C., (1998) "China's ports surge ahead", in Containerisation International, July.

千須和富士夫[1998]「現代港湾の再考発展段階としての港湾ネットワーク─ハチソン・ワンポアグループの行動形態」『海事産業研究所報』No.388

 

 

 

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