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(2) 戡湾(カンマン)ターミナル

戡湾ターミナルは、韓国で最初の本格的民間資本導入によるターミナルのひとつとして、1992年に建設が開始された。釜山へのコンテナ貨物の集中に対応するために、既存の神仙台ターミナルの隣接地に計画されたものである。1,400m岸壁によってポストパナマックス船の4隻の接岸が可能となり、計画上の年間処理能力は1,200万TEUである。

戡湾ターミナルについては総工費5億米ドルに対して、4社の民間企業体が投資を行った。すなわち政府から指定された韓進海運、現代商船、朝陽海運の国内3船社ならびに大韓通運(Korea Express Transportation Co.; KEC)が80%とZIM/OOCLが各10%出資のコンソーシアムである。工事に5年を要し、1998年4月の供用開始後、これら4社がターミナルの運営を行っている。借受は10年契約であるが、交渉によってさらに1回の更新が行なわれ、実質的には20年(工事期間を入れると25年)契約である。

戡湾ターミナルが完成し、KEC、現代、韓進、朝陽の各社が同ターミナルに移転した後には、子城台などの既存ターミナルにおいても相当程度の貨物でオンドックシステムを採用できることになり、このことが戡湾ターミナル建設の大きな目的であった。たとえばKECは、戡湾ターミナルが供用し、オンドックシステムの採用が可能となった結果、輸出の2日前搬入を当日直接搬入に改めた。それでも同社は、長期的に完全なターミナル直接搬入を行うために十分なスペースが確保されたとはいえない、と語っている。

 

(3) 光陽(クァンヤン)ターミナル

釜山の西140kmに位置する光陽ターミナルは、取扱貨物量の増大に 対応するために建設が計画されたもので、プロジェクトは4期からなる。すでに供用している第1期は、1,400mの岸壁に面した4バースからなる。各バースは350mの延長と水深14.5mをもつ。年間取扱能力は96万TEUである。引き続いての第2期では、6バースが建設され、5万t級4隻と2万t級2隻の接岸が可能となる。立地決定自体は、国土の東西での開発のバランスをとり国土の均衡ある開発を行うため、大規模港湾のない西側での適地として決定されたものである。また有事の際に釜山を代替する港湾という趣旨があるものの、全体として政治的産物としての性格が強い。ただし物流上のニーズとしても、西部の都市からの工業製品輸出は西部の港湾から、東部は釜山からという理念に基づいている。背後地都市としては大田が想定されている。またソウルからの距離のうえでも釜山よりも光陽の方が18kmとわずかに近い。

無料蔵置期間を長くし、後述のように港湾荷役料を安くすることにより、中国北部発貨物については魅力を提供できると考えられ、利用貨物の50%がトランシップ貨物となると見込まれた。

光陽ターミナルについては、韓国第3の船社である朝陽海運が強い関心を示した。しかし開港前に経営難に陥った同社は、釜山戡湾ターミナルと光陽ターミナルの賃借権を他の韓国船社2社とP&O、さらにはエバーグリーンに売却しようとしたものの、実際には失敗している。

 

 

 

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